税務調査のオンライン対応が本格化して急増!?知っておくべき知識

税務調査のオンライン対応

この記事は、企業経営者や経理担当者、税理士、個人事業主など、税務調査のオンライン化に関心を持つすべての方に向けて経験豊富な税理士の北村嘉章税理士(北村税理士事務所)が詳しく解説しています。

2024年以降、国税庁による税務調査のデジタル化が本格化し、オンラインでの調査対応が急増しています。

本記事では、最新の動向やオンライン調査の流れ、必要なIT環境の準備注意点実地調査との違い、今後の展望まで、実務に役立つ知識をわかりやすく解説します。オンライン税務調査に不安や疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

税務調査のオンライン対応が急増する背景と最新動向

近年、税務調査のオンライン対応が急速に拡大しています。その背景には、新型コロナウイルス感染症の影響による対面機会の抑制や、国税庁のデジタル化推進があります。

2025年(令和7年)9月からは、法人・個人を問わず全税目でオンライン調査が段階的に導入される予定です。これにより、従来の現地調査や対面面談から、Web会議や電子データ提出など非対面型の調査手法が主流となりつつあります。

今後は、調査官とのやりとりや書類提出もオンライン化が進み、納税者や企業の対応も大きく変化していくでしょう。

国税庁・国税局による税務調査の変化とデジタル化の流れ

国税庁・国税局は、税務調査の効率化と透明性向上を目的に、デジタル化を積極的に推進しています。従来は調査官が企業や個人の事業所に訪問し、書面や対面でのやりとりが中心でしたが、現在はWeb会議システムやオンラインストレージを活用した調査が増加中です。

また、電子申告や電子帳簿保存法の普及により、会計データや証憑書類のデジタル提出が一般化しつつあります。
今後は、調査の通知や連絡もインターネットメールで行われるケースが増え、調査の全体像が大きく変わることが予想されます。

  • 従来の調査: 調査官が企業や事業所に訪問し、紙の書類対面でのやりとりが中心。
  • 現在の調査: Web会議システムオンラインストレージを活用した調査が増加中。
  • 後の予測: 2025年(令和7年)9月からは、全税目オンライン調査が段階的に導入される予定であり、非対面型の調査手法が主流となりつつある。

テレワーク・DX推進による調査手法の拡大

テレワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、税務調査の手法を多様化させています。

調査官と納税者が物理的に離れた場所からでも、Web会議や電子データ提出により円滑に調査を進めることが可能になりました。これにより、日程調整の柔軟化移動コスト・時間の削減につながっています。

また、AIやRPAなどの新技術の導入も視野に入り、調査のスピードアップ正確性の向上が期待されています。

従来の調査オンライン調査
現地訪問・対面面談Web会議・リモート面談
紙の書類提出電子データ提出(PDF, CSVなど)
郵送・電話連絡メール・オンライン通知

調査課所管法人とは?オンライン化による調査対象の拡大

税務調査には、国税局に設置された専門部門が担当する「調査課」や「調査課所管法人」という用語が登場します。

調査課とは、国税局に設置された専門の調査部門で、主に大企業や複雑な取引を行う法人を担当します。調査課所管法人とは、一定規模以上の売上や資本金を持つ企業で、通常の税務署ではなく国税局の調査課が直接調査を行う対象です。

オンライン調査の導入により、実地調査(訪問調査)の対象ではない中小企業や個人事業主に対しても、簡易な接触(デスクトップ調査)の機会が増加しています。

調査課所管法人の規模による法的定義が拡大したわけではありませんが、国税当局がデータ分析により広範囲の納税者に対して効率よく申告内容の確認や資料提出を求めることが可能になったため、実質的に税務署からのコンタクトを受ける母数は拡大しています。

オンライン調査の導入により、これまで調査課の対象でなかった中小企業や個人事業主にも調査の範囲が拡大する傾向がある為、自社がどの調査区分に該当するかを把握し、適切な準備を進めることが重要です。

税務調査のオンライン化で押さえたい基礎知識と流れ

オンライン対応の流れと一般的な手続き

オンライン税務調査の流れは、従来の対面調査と大きく異なります。流れとしては以下のような流れとなります。

  1. 事前通知・同意書の受領: 国税庁や税務署からオンライン調査の通知同意書が送付されます。
  2. 準備: 納税者が同意した場合、Web会議や電子データ提出の準備を開始します。
  3. オンライン面談: Web会議システムを利用して調査官と面談し、画面共有や資料の提示を行います。
  4. 完結: 追加資料の提出や質疑応答もオンラインで完結するケースが増えています。

流れを理解し、事前準備を怠らないことがスムーズな対応のポイントです。

電子申告や電子データ提出の実務ポイントと注意点

オンライン税務調査では、電子申告や電子データ提出が必須となる場面が増えています。会計ソフトやクラウドサービスを活用し、証憑書類や帳簿データをPDFやCSV形式で提出することが一般的です。

データの改ざん防止やセキュリティ対策も重要で、パスワード付きファイルや暗号化通信の利用が推奨されます。また、提出期限やファイル形式の指定など、細かなルールを守ることがトラブル防止につながります。

電子データの保存期間やバックアップ体制も見直しておきましょう。

Web会議・リモート面談で必要な環境と事前準備

Web会議やリモート面談を円滑に進めるためには、安定したインターネット回線とパソコン、カメラ、マイクなどの機材が必要です。事前にWeb会議システム(Microsoft TeamsやWebexなど)の動作確認を行い、資料の画面共有やファイル送信の練習もしておきましょう。

また、会議中に第三者が入室しないよう、静かな場所を確保することも大切です。調査官とのやりとりを記録するため、録画や議事メモの準備もおすすめします。

トラブル時の連絡手段も事前に確認しておきましょう。

同意書・通知・事前連絡を含む手続き方法と注意事項

税務調査における同意書の意義と取り扱い(法的な注意点)

オンライン税務調査を実施する際には、納税者の同意が必要です。

国税庁や税務署から送付される同意書には、調査方法や使用するオンラインツール、データの取り扱いなどが明記されています。
納税者は内容をよく確認し、疑問点があれば事前に問い合わせましょう。

同意書に署名・返送することで、正式にオンライン調査が開始されます。同意書の保管や電子データでの保存も忘れずに行いましょう。

国税庁・調査課からの事前連絡や通知の流れ

オンライン調査の開始前には、国税庁や調査課から事前連絡や通知が行われます。通知は郵送やメールで届き、調査の目的や日程、必要書類、オンライン面談の方法などが記載されています。

通知を受け取ったら、速やかに内容を確認し、指定された期日までに必要な準備を進めましょう。

あわせて、調査官との連絡方法(メール・電話など)も明記されているため、連絡先の確認も重要です。通知内容に不明点があれば、早めに問い合わせることがトラブル防止につながります。

オンライン化による書類の提出・保存・照会の変化

オンライン税務調査の普及により、書類の提出・保存・照会方法も大きく変化しています。従来の紙ベースから、PDFや電子データでの提出が主流となり、オンラインストレージやメール添付でのやりとりが増加しています。

また、電子帳簿保存法に基づくデータ保存や、クラウドサービスの活用も進んでいます。これにより、書類の紛失リスクが減少し、迅速な照会や再提出が可能となりました。

ただし、データのセキュリティや保存期間の管理には十分注意が必要です。

従来の方法オンライン化後
紙の書類提出・保存PDF・電子データ提出・保存
郵送・持参メール・オンラインストレージ
物理的な保管クラウド・サーバーでの保管

大企業と中小企業で異なるオンライン税務調査の実態

調査課所管法人かどうかの判断基準

オンライン税務調査の対象となるかどうかは、企業の規模や業種によって異なります。

特に「調査課所管法人」と呼ばれる大企業は、国税局の調査課が直接担当し、複雑な取引や大規模な資産を持つ企業が該当します。判断基準としては、資本金1億円以上や売上高が一定規模を超える場合、またはグループ会社を多く持つ場合などが挙げられます。

一方、中小企業や個人事業主は、通常は税務署が担当しますが、オンライン化の進展により今後は調査課の対象範囲が広がる可能性もあります。

自社がどの区分に該当するかを事前に確認し、適切な対応を準備しましょう。

大企業・中小企業における調査対象や範囲の違い

大企業と中小企業では、税務調査の対象や調査範囲に違いがあります。大企業の場合、海外取引やグループ間取引、複雑な会計処理などが重点的に調査される傾向があり、調査期間も長期化しやすいです。

一方、中小企業や個人事業主は、売上や経費の計上、現金取引の管理など、基本的な会計処理が中心となります。

オンライン調査の導入により、どちらの規模でも電子データの提出やWeb会議での面談が標準化されつつありますが、調査の深度や頻度には依然として差があります。自社の規模や業種に応じた準備が重要となります。

大企業中小企業・個人
海外・グループ取引の調査売上・経費の基本調査
調査期間が長い傾向比較的短期間で完了
複雑な会計処理現金管理や帳簿の確認

金融機関や個人も対象?最新拡大状況と今後の方向性

オンライン税務調査の対象は、法人だけでなく金融機関や個人にも拡大しています。特に、預貯金情報のオンライン照会が急速に普及し、個人の資産状況や取引履歴も短期間で把握できるようになりました。

今後は、個人事業主やフリーランス、さらには副業を行う会社員なども調査対象となる可能性が高まっています。また、金融機関に対しても電子データでの情報提供が求められるケースが増加中です。

このような動向を踏まえ、すべての納税者がオンライン調査への備えを進める必要があります。

税理士会・納税者・企業のための事前準備と対応策

税務調査のオンライン対応事前準備

リモート対応に強い税理士・事務所の選び方・役割

オンライン税務調査に対応するためには、リモート対応に強い税理士や会計事務所のサポートが不可欠です。選び方のポイントは、Web会議や電子データ提出の実績が豊富で、最新の税務知識やITスキルを持つことがポイントです。

また、調査官とのやりとりや資料準備、トラブル時の対応まで一貫してサポートできる事務所を選ぶと安心です。税理士は、納税者の代理人として調査の進行管理や交渉も担うため、信頼できるパートナーを見つけましょう。

必要なツール・システム導入と効率化のポイント

オンライン税務調査に備えるには、必要なITツールやシステムの導入が重要です。会計ソフトや電子帳簿保存システム、クラウドストレージ、Web会議システム(Teams、Zoomなど)を活用することで、資料の提出や面談がスムーズに行えます。

効率化のポイントは、日頃からデータを整理・保存し、必要な時にすぐ提出できる体制を整えておくことです。ツールの操作方法も事前に確認しておきましょう。

企業は、ITツールの導入だけでなく、担当者のITリテラシー向上セキュリティ体制の構築を喫緊の課題として取り組む必要があります。

調査官とのオンライン面談で気をつける事項

調査官とのオンライン面談では、対面時と同様に誠実な対応が求められます。事前に資料を整理し、質問に的確に答えられるよう準備しましょう。

また、通信トラブルや音声不良に備えて、予備の連絡手段を用意しておくと安心です。面談中は、発言内容ややりとりを記録し、後日の確認や証拠として活用できるようにしましょう。

プライバシーや情報漏洩にも十分注意し、第三者が同席しない環境を整えることも大切です。

国税調査:いつから・どう変化?

令和7年までの全国・段階的導入スケジュール

国税庁は、2025年(令和7年)9月から全国でオンライン税務調査を段階的に導入する方針を発表しています。まずは大企業や調査課所管法人を中心に試行が始まり、その後、中小企業や個人事業主にも対象が拡大されていく予定です。

このスケジュールに合わせて、各地の税務署や国税局でもWeb会議システムや電子データ提出の体制整備が進められています。納税者側も、早めにオンライン対応の準備を進めておくことが重要です。

今後は、全国どこでも同じ水準のオンライン調査が受けられるようになる可能性が高いでしょう。

全国拡大で今後の税務調査が変わるポイント

オンライン税務調査の全国拡大により、調査の進め方や納税者の対応が大きく変わります。

従来の現地訪問や対面面談が減少し、Web会議や電子データ提出が標準となるため、物理的な距離や時間の制約がなくなります。その為、調査官と納税者のやりとりが記録として残りやすくなり、透明性や公平性の向上も期待されています。

一方で、ITリテラシーやセキュリティ対策が求められるため、企業や個人は新たな対応力が必要です。

今後は、調査の効率化と納税者の負担軽減が進む一方で、デジタル対応の遅れがリスクとなる可能性もあります。

オンライン税務調査のメリット・デメリットと今後の課題

実地調査・対面調査との違いと現場の声

オンライン税務調査は、従来の実地調査や対面調査と比べて多くの違いがあります。現場の声としては、移動や日程調整の負担が減り、調査の効率が向上したという意見が多い一方、IT環境の整備やセキュリティ対策に苦労するケースも見られます。

また、画面越しのやりとりでは細かなニュアンスが伝わりにくい、資料の提示方法に工夫が必要などの課題も指摘されています。
今後は、オンラインと対面のメリットを組み合わせたハイブリッド型の調査も増えていくでしょう。

オンライン化による効率化や業務負担の変化

オンライン化によって、税務調査の効率化や業務負担の軽減が期待されています。資料の電子提出やWeb会議の活用により、調査にかかる時間やコストが大幅に削減されます。他には、データのやりとりが迅速になり、調査官・納税者双方の負担が減少します。

一方で、ITツールの導入や操作に不慣れな場合は、逆に準備や対応に時間がかかることもあります。今後は、誰もが使いやすいシステムの普及と、ITリテラシー向上のためのサポートが求められます。

メリットデメリット
効率化・コスト削減IT対応の負担増
迅速な資料提出セキュリティリスク
柔軟な日程調整操作ミスのリスク

税務調査オンライン化のまとめ

国税庁は2025年(令和7年)9月から、オンライン税務調査を全国で本格導入します 。これはWeb会議や電子データ提出が主流となる非対面型の調査です

メリットは日程調整の柔軟化や効率化ですが、IT環境の整備セキュリティ対策が必須の課題にもなります 。中小企業や個人事業主も対象が拡大する傾向にあるため、リモート対応に強い税理士と連携し 、電子データ管理を強化することが、デジタル化時代の税務調査におけるリスク対策となるでしょう。

執筆者プロフィール

北村 嘉章
北村 嘉章
所属:四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
肩書:
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族:妻と長女と長男の4人家族
職歴:日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

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