
この記事は、個人事業主や副業をしている会社員、フリーランス、相続や贈与を受けた方など税務調査は個人にも来るの?という不安や疑問を持つすべての方に向けて経験豊富な税理士の北村嘉章税理士(北村税理士事務所)が詳しく解説しています。
税務調査が個人に入る理由や、調査の流れ、注意点、よくある誤解、そして未然に防ぐための対策まで、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、税務調査に対する正しい知識と備え方が身につき、安心して日々の会計や申告に取り組めるようになるでしょう。
目次
税務調査が個人に入る背景と基本知識
税務調査は、納税者が正しく所得を申告し、適切に納税しているかを税務署が確認するために行われます。個人の場合、事業所得や不動産所得、譲渡所得、相続・贈与など、さまざまな収入が調査対象となります。
特に個人事業主や副業をしている会社員は、売上や経費の計上ミス、申告漏れが起こりやすいため、税務署から注目されやすい傾向があります。
また、近年はインターネット取引や仮想通貨、海外資産なども調査の対象範囲が広がっています。税務調査は突然やってくることもあるため、日頃から正確な記帳と資料管理が重要です。
税務調査とは?個人が対象となる仕組みを解説
税務調査とは、税務署や国税局が納税者の申告内容に誤りや不正がないかを確認するために行う調査です。
個人が対象となる場合、主に所得税、消費税(事業者の場合)、相続税、贈与税などが調査の中心となります。税務署は、申告内容や取引状況、過去の申告履歴に加え、金融機関や取引先からの情報、マイナンバー制度などを活用して、個人の資産や収入の動きを把握し、「調査が必要」と判断した納税者を選定します。
法人・個人事業主・個人の調査の違いと共通点
税務調査は法人、個人事業主、給与所得者など、納税者の形態によって調査のポイントや手法が異なります。法人の場合は会社の経理全般が対象となり、個人事業主は事業用の帳簿や領収書、個人は主に所得や資産の動きが調査されます。
一方で、どの形態でも「正しい申告・納税」が求められる点は共通しています。また、事業用とプライベートの資金の区別や、証憑書類の保存義務なども共通の注意点です。
下記の表で違いと共通点をまとめます。
| 納税者区分 | 主な調査対象 | 共通点 |
|---|---|---|
| 法人 | 会社全体の経理・資産 | 正しい申告・証憑保存 |
| 個人事業主 | 事業用帳簿・領収書 | 資金区分・証憑保存 |
| 個人 | 所得・資産の動き | 正しい申告・証憑保存 |
税務調査が「10年以上来ない」などの噂の真相
「税務調査は10年以上来ない」「一度も調査が入ったことがない」という噂を耳にすることがありますが、これは必ずしも正しいとは限りません。税務調査は、申告内容や業種、過去の調査履歴などによって頻度が異なります。
また、税務署はリスクの高い納税者を優先的に調査するため、目立った問題がなければ長期間調査が入らないこともあります。
しかし、申告漏れや不自然な取引が発覚した場合、過去7年分まで遡って調査されることもあるため、油断は禁物です。
「来ないから大丈夫」と思わず、日頃から正しい記帳と申告を心がけましょう。
税務調査が個人に入る主な理由と調査対象の特徴
税務調査が個人に入る主な理由は、申告内容に不自然な点やミスが見られる場合、または高額な所得や資産の動きがある場合です。
特に、売上の計上漏れや経費の過大計上、事業用とプライベートの資金の混同、相続や贈与による資産の増加などが調査のきっかけとなります。
また、インターネット取引や仮想通貨、海外資産など、近年注目されている分野も調査対象となりやすいです。税務署は様々な情報をもとに調査対象を選定しているため、どんな個人でも調査のリスクがあることを理解しておきましょう。
税務署がチェックする「いくらから」調査対象?
税務署が個人の税務調査を行う際、「いくらから調査対象になるのか?」という疑問を持つ方は多いです。結論、税務調査の対象は、金額だけでは判断されません。
一般的には、課税所得が1,000万円を超えると調査対象になりやすいと言われていますが、金額だけでなく、申告内容の不自然さや取引の複雑さも重要な判断基準です。
たとえば、売上や経費の大きな変動、急な資産の増加、相続や贈与による高額な資金移動などがある場合、金額が1,000万円未満でも調査対象となることがあります。
また、仮想通貨や海外取引など、税務署が注目している分野も金額に関わらず調査されるケースが増えています。
申告漏れ・経費・売上・口座の管理問題
税務調査で特に指摘されやすいのが、申告漏れや経費の過大計上、売上の計上漏れ、そして口座管理の不備です。例として、事業用と個人用の口座を混同していると、プライベートの入出金が事業収入や経費と誤認されるリスクがあります。
また、領収書や請求書の保存が不十分だと、経費として認められない場合もあります。売上の一部を申告し忘れたり、現金取引を記録していなかったりすると、意図的な脱税とみなされることもあるため日々の記帳と証憑管理で徹底した注意が必要です。
申告内容や取引先との関連性が指摘されやすいケース
税務調査では、申告内容と取引先との関連性も厳しくチェックされます。例えば、取引先との売上や支払いが帳簿と一致していない場合や、架空取引・水増し請求が疑われる場合は、調査対象となりやすいです。
また、家族や親族との取引が多い場合や、同一住所・同一名義での資金移動が頻繁にある場合も、税務署は不自然な点がないかを重点的に確認します。
取引先との契約書や請求書、振込記録などをしっかり保存し、説明できるようにしておくことが重要です。
事業用とプライベートの資金・口座の区別とリスク
事業用とプライベートの資金や口座を明確に区別していないと、税務調査で大きなリスクとなります。個人口座に事業収入が入金されていたり、事業用口座からプライベートの支出がされていたりすると、税務署は「本当に事業に関係する取引か?」と疑いを持ちます。
このような場合、経費として認められない支出が増えたり、売上の申告漏れを指摘されたりする可能性が高まります。
日常的に資金の流れを整理し、事業用と個人用の口座・カードを分けて管理することが重要です。
消費税や相続税が影響する場合
個人の税務調査では、所得税だけでなく消費税や相続税も重要な調査対象となります。たとえば、消費税の課税売上高が1,000万円を超える場合や、相続・贈与による高額な資産移動があった場合は、税務署が特に注目します。
相続税の場合、被相続人や家族の預金・資産の動きまで細かく調査されることが多く、過去の贈与や資産移転も遡って確認されるので、消費税や相続税の申告・納税に不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

税務調査の種類と流れ|任意調査・強制調査の違い
税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。任意調査は、税務署からの事前通知や連絡を受けて行われる一般的な調査で、納税者の協力を前提としています。
一方、強制調査は重大な脱税や犯罪の疑いがある場合に、裁判所の令状を得て行われるもので、国税局査察部(マルサ)が担当します。多くの個人や個人事業主が経験するのは任意調査ですが、調査の流れや対応方法を知っておくことで、万が一の際にも落ち着いて対処できます。
また、税務調査では、国税通則法の定める更正の期間制限に基づき、申告内容を確認します。個人の所得税の調査は、通常の申告漏れの場合、原則として過去5年分が対象となります。
ただし、偽りやその他不正の行為(意図的な脱税など)があったと認められる場合は、最長7年分まで遡って調査が行われます。
任意調査と強制調査|調査方法・実地調査の流れ
任意調査は、税務署からの電話や書面による連絡で始まり、調査日程や場所(自宅や事務所など)が指定されます。当日は調査官が帳簿や領収書、通帳などの資料を確認し、必要に応じて質問を行います。
一方、強制調査は裁判所の令状に基づき、突然の家宅捜索や資料押収が行われるため、納税者の同意は不要です。
任意調査と強制調査の違いを下記の表でまとめていますのでご参考ください。
| 調査種類 | 特徴 | 主な流れ |
|---|---|---|
| 任意調査 | 事前通知・協力前提 | 連絡→日程調整→実地調査→質疑応答 |
| 強制調査 | 令状必要・脱税疑い | 突然の捜索→資料押収→事情聴取 |
事前通知・連絡から当日の立ち会い・提示事項まで
任意調査の場合、税務署から事前に電話や書面で調査の通知が届きます。通知には調査日や調査官の氏名、持参すべき資料などが記載されています。
当日は納税者本人または代理人(税理士など)が立ち会い、帳簿や領収書、通帳、契約書などを提示します。調査官はこれらの資料をもとに質問を行い、不明点があれば追加資料の提出を求めることもあります。
事前に資料を整理し、スムーズに対応できるよう準備しておくことが大切です。
調査官の質問・取引や経費についてのチェックポイント
税務調査では、調査官から取引内容や経費の使途、資金の流れについて詳細な質問がされます。「この経費はどのような業務に使ったのか」「この取引先との関係は?」といったようなケースで、具体的な説明を求められることが多いです。
また、現金取引や家族・親族との取引、海外送金なども重点的にチェックされます。説明に自信がない場合や不明点がある場合は、事前に税理士など専門家に相談しておくと安心です。
税務調査 個人の確率・時期・頻度の実情
税務調査が個人にどれくらいの確率や頻度で入るのかは、多くの方が気になるポイントです。実際には、個人事業主や副業をしている会社員の場合、税務調査が入る確率は1.5~2.5%程度とされています。
ただし、業種や事業規模、過去の申告内容によっても大きく異なります。また、調査の時期は確定申告後の数か月から1年以内に行われることが多いですが、相続や贈与が発生した場合はその直後に調査が入るケースもあります。
税務署はリスクの高い納税者を優先的に調査するため、日頃から正しい申告と記帳を心がけることが重要です。
「税務調査はどれくらいの確率・頻度で入る?」平均事例
税務調査の確率は、個人事業主やフリーランスの場合、年間で1.5~2.5%程度とされています。つまり、100人に1~2人程度が毎年調査を受けている計算です。
一方、相続税の調査は10%を超える高い確率で行われることもあります。また、過去に調査を受けていない場合や、申告内容に不自然な点がある場合は、調査の頻度が高まる傾向があります。
下記の表で平均的な調査確率をまとています。
| 対象 | 調査確率(目安) |
|---|---|
| 個人事業主 | 1.5~2.5% |
| 法人 | 1.5~2.5% |
| 相続税 | 10%以上 |
業種・事業規模・過去の申告内容による傾向
税務調査の対象となりやすいかどうかは、業種や事業規模、過去の申告内容によっても大きく異なります。例として、現金商売が多い飲食業や小売業、インターネット取引、仮想通貨取引などは調査対象になりやすい傾向があります。また、売上や経費の大きな変動、過去に申告漏れや修正申告があった場合も、税務署から注目されやすいです。
事業規模が大きくなるほど調査の頻度も高まるため、規模拡大時は特に注意が必要です。
税務調査時に注意すべきポイントと対策

税務調査を受ける際には、帳簿や領収書の管理、会計ソフトの活用、税理士への相談など、さまざまなポイントに注意が必要です。
特に、証憑書類の保存や現金取引の記録、銀行口座の管理などは、調査官から厳しくチェックされる部分です。
事前にしっかりと準備をしておくことで、調査当日に慌てずに対応できます。また、税理士や顧問のサポートを受けることで、専門的なアドバイスや交渉もスムーズに進められます。
帳簿・領収書なしでのリスクと必要資料一覧
帳簿や領収書がない場合、経費として認められないだけでなく、売上や所得の申告漏れを疑われるリスクが高まります。税務調査では、過去7年分の帳簿や証憑書類の保存が義務付けられているため、日頃から整理・保管しておくことが重要です。
必要な資料は下記の通りです。
- 帳簿(現金出納帳・売上帳・仕入帳など)
- 領収書・請求書
- 通帳・クレジットカード明細
- 契約書・見積書
- 給与明細・源泉徴収票
会計ソフト・書類・資料の事前準備・管理方法
会計ソフトを活用することで、日々の取引を正確に記録し、帳簿や資料の管理が効率的に行えます。また、領収書や請求書はスキャンしてデータ保存することで、紛失リスクを減らせます。
資料は年度ごと・取引先ごとにファイリングし、すぐに提示できるようにしておきましょう。定期的にバックアップを取り、データの消失にも備えることが大切です。
税理士や顧問のサポートの重要性と依頼方法
税務調査に不安がある場合や、専門的な対応が必要な場合は、税理士や顧問のサポートを受けることをおすすめします。税理士は調査当日の立ち会いや、税務署との交渉、資料の準備などをサポートしてくれます。
依頼方法は、事前に相談したい内容や調査の状況をまとめておき、信頼できる税理士事務所に連絡するのが一般的です。顧問契約がなくても、スポットでの相談や立ち会い依頼も可能です。
現金取引・銀行口座・請求書管理の注意
現金取引は記録が残りにくいため、税務調査で特に厳しくチェックされます。現金の出入りは必ず現金出納帳に記録し、領収書や請求書と突き合わせて管理しましょう。
また、銀行口座は事業用と個人用を分け、取引内容が明確になるようにしておくことが重要です。請求書も発行・受領の両方を整理し、取引先ごとにファイリングしておくと、調査時にスムーズに対応できます。
税務調査を未然に防ぐ/入った後の対応策
税務調査を未然に防ぐためには、日常の記帳や資料管理、正しい申告が不可欠です。万が一調査が入った場合も、冷静に対応し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで大きなトラブルを回避できます。
日常の対策や調査後の正しい対応方法について解説します。
日常の記帳・資料管理と税金対策のポイント
日々の取引を正確に記帳し、領収書や請求書を整理・保管することが、税務調査を未然に防ぐ最大のポイントです。会計ソフトを活用し、定期的に帳簿を見直すことで、ミスや漏れを早期に発見できます。
また、節税対策を行う際も、根拠となる資料を必ず残しておきましょう。税金対策は「合法的に」「証拠を残す」ことが大切です。
修正申告・追加対応等の正しい対処法
税務調査で申告漏れやミスが発覚した場合は、速やかに修正申告を行いましょう。修正申告を自主的に行うことで、加算税や延滞税が軽減される場合もあります。
調査官から指摘された内容は必ず記録し、必要な追加資料を提出することが重要です。不明点があれば税理士に相談し、正しい手順で対応しましょう。
専門家に相談すべきタイミングと判断基準
税務調査の通知が届いた時点や、申告内容に不安がある場合は、早めに税理士など専門家に相談することをおすすめします。特に、複雑な取引や海外資産、相続・贈与が絡む場合は、専門的な知識が必要です。
調査当日の立ち会いや税務署との交渉も、専門家のサポートがあると安心です。
「自分だけで対応できるか不安」と感じたら、迷わず相談しましょう。
個人の税務調査で後悔しないために知っておきたいこと
個人への税務調査は、副業収入や相続・贈与、口座の公私混同などが主な理由で実施されます 。調査は所得や資産の動きをチェックし、申告漏れが発覚すると過去7年分まで遡及されます 。
「いくらから」という明確な基準はありませんが、不自然な資金移動があれば調査対象です 。対策としては、事業用・個人用の口座を厳格に分け、証憑書類を7年間保存することが不可欠です 。
通知を受けたら、税理士に相談し、冷静に対応することが追徴課税を防ぐ最善策です 。

執筆者プロフィール

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所属:四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
肩書:
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族:妻と長女と長男の4人家族
職歴:日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年
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