法人に税務調査はいつ来る?法人が狙われやすい理由と事前対策

税務調査が来た法人

この記事は、法人経営者や経理担当者、これから会社設立を考えている方に向けて、「法人税 務調査」で検索する方が知りたい、税務調査がいつ来るのか、どんな基準で選ばれるのか、調査の流れや事前対策について、経験豊富な税理士の北村嘉章税理士(北村税理士事務所)がわかりやすく解説します。

税務調査の不安を解消し、適切な準備と対応ができるよう、実務に役立つ情報をまとめました。

目次

法人に税務調査はいつ来る?基本概要と流れ

税務調査とは何か?法人税調査の基本的な仕組み

税務調査とは、法人が提出した申告書が税法に則って正しく作成されているかを、税務署や国税局が確認する行政手続きのことです。
主な調査対象は法人税、消費税、源泉所得税などが対象となり、帳簿や証憑書類、取引内容などを詳細にチェックされます。

調査には「任意調査」と「強制調査」があり、ほとんどの法人が受けるのは任意調査です。

税務調査は、脱税や申告漏れの防止、公平な課税の実現を目的としています。

法人税務調査の一般的な流れと期間・スケジュール

法人税務調査は、通常、事前に税務署から調査通知が届き、日程調整のうえで実施されます。調査当日は、まず会社の事業内容や経理体制についてヒアリングが行われ、その後、帳簿や証憑書類の確認、現金・在庫の実査などが進められます。

調査日数は会社の規模や内容によりますが、小規模法人なら1~2日、大規模法人では数日~1週間程度かかることもあります。

調査後は、指摘事項があれば修正申告や追徴課税の手続きが必要です。

以下、大まかな流れや期間を整理したものとなります。

  • 事前通知→日程調整→当日調査→指摘事項の説明→修正申告・納税
  • 小規模法人は1~2日、大規模法人は数日~1週間
  • 調査結果の説明として調査終了後、指摘事項や是正点について説明があります。
  • 指摘事項があった場合は事後対応として指摘事項に基づき、修正申告追徴課税の納付を行います。
調査規模日数の目安
小規模法人1~2日
中~大規模法人3日~1週間

税務調査が入る時期とそのタイミングの特徴

税務調査が行われる時期には一定の傾向があります。国税庁の事務年度は7月に始まり翌年6月までですが、特に7~12月は決算月が2~5月の法人が優先的に調査対象となることが多いです。

また、決算申告後しばらく経ってから調査が入るケースが多く、申告内容の分析や選定作業に時間がかかるためです。ただし、明確な決まりはなく、過去に調査が長期間入っていない法人や、申告内容に不自然な点がある場合は、時期を問わず調査が行われることもあります。

  • 7~12月は調査が多い時期
  • 決算月2~5月の法人が狙われやすい
  • 申告後しばらくしてから調査が入る
項目詳細
調査が来やすい時期国税庁の事務年度(7月~翌年6月)に基づき、7月~12月が調査のピークです。特に、決算月が2~5月の法人がこの時期の対象となりやすい傾向があります。
調査の確率(目安)通年(特法人全体の調査確率は、一般的に年間1.5~2.5%程度とされています。つまり、数年に一度のペースが目安です。(※ただし、上記の特徴に当てはまる場合は確率は上がります)

法人が税務調査で狙われやすい理由と対象基準

税務署が税務調査対象を選定する基準とは

税務署が税務調査の対象法人を選ぶ際には、いくつかの基準があります。まず、過去の申告内容や業績推移、同業他社との比較、税務署独自のデータベース分析などが活用されます。

また、売上や利益の急激な変動、不自然な経費計上、長期間調査が入っていない法人なども重点的に選定されやすいです。さらに、匿名の通報や取引先からの情報提供がきっかけとなる場合もあります。

以下の基準をもとに、調査の優先順位が決められます。

  • 過去の申告内容や業績推移
  • 同業他社との比較
  • 売上・利益の急変動
  • 長期間調査がない法人
  • 匿名通報や情報提供

売上や規模・業種が与える影響

売上や会社規模、業種も税務調査の選定に大きく影響します。売上が急増したり、規模が拡大した法人は、申告内容に誤りや漏れが生じやすいため、調査対象になりやすい傾向があります。

また、現金商売が多い飲食業や建設業、医療業などは、売上の把握が難しいため、他業種よりも調査頻度が高いです。一方で、IT業やコンサル業など、経費の内容が多様な業種も、経費計上の妥当性がチェックされやすいです。

業種調査頻度の特徴
飲食業・建設業現金商売で高い
医療業高い
IT・コンサル業経費内容で注目

赤字法人や10年以上来ない法人が調査される理由

赤字が続く法人や、10年以上税務調査が入っていない法人も、調査対象になりやすいです。赤字計上が長期化している場合、実際には利益が出ているのに意図的に赤字申告している可能性が疑われます。

また、長期間調査がない法人は、過去の申告内容に誤りや不正が潜んでいるリスクが高いと判断されるため、優先的に調査が行われることがあります。

税務署はこうした法人を「重点管理法人」としてリストアップし、定期的に調査を実施しています。

不自然な申告内容・申告漏れが指摘される事例

税務調査でよく指摘されるのは、不自然な申告内容や申告漏れです。例えば、売上や利益が急激に変動している、経費が異常に多い、役員報酬が高額すぎる、交際費や福利厚生費の使い方が不明瞭などが挙げられます。

また、消費税や源泉所得税の納付漏れ、従業員の給与計算ミス、取引先との架空取引なども調査で発覚しやすいポイントです。こうした不自然な点があると、税務署は重点的に調査を行い、修正申告や追徴課税を求めることがあります。

以下のような内容には十分注意しましょう。

  • 売上・利益の急変動
  • 経費の異常増加
  • 役員報酬の高額化
  • 交際費・福利厚生費の不明瞭な使い方
  • 消費税・源泉所得税の納付漏れ

税務調査が入るとどうなるのか?実施内容と調査範囲

どこまで調べる?調査項目と必要書類・帳簿の範囲

調査官は、経理に関するあらゆる資料を過去3年分(不正疑義の場合は最大7年分)調査します。税務調査では、法人の会計帳簿や証憑書類、契約書、領収書、請求書、銀行通帳など、経理に関するあらゆる資料が調査対象となります。

特に、売上や仕入、経費の根拠となる書類は細かくチェックされます。また、代表者や役員の個人預金通帳や、関連会社との取引資料も調査範囲に含まれる場合があります。

調査官は、帳簿と実際の取引内容が一致しているか、証拠書類が適切に保存されているかを重点的に確認します。

実地調査・任意調査・強制調査の違いと対応

税務調査には「任意調査」と「強制調査」があります。任意調査は、納税者の同意のもとで行われるもので、ほとんどの法人が受けるのはこちらです。

一方、強制調査は重大な脱税の疑いがある場合に、裁判所の令状を得て行われ、帳簿や資料の押収も可能です。また、実地調査は会社に調査官が訪問して行うもので、書面調査(郵送や電話での確認)よりも詳細に調べられます。

調査の種類によって対応方法や準備すべき資料が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

調査の種類特徴
任意調査納税者の同意で実施、一般的
強制調査令状が必要、重大な脱税疑い時
実地調査会社訪問で詳細調査

当日の流れと税務調査官からの質問内容

税務調査当日は、まず調査官が会社に訪問し、事業内容や経理体制についてヒアリングを行います。その後、帳簿や証憑書類の確認、現金・在庫の実査、取引先との契約内容の確認などが進められます。

調査官からは、売上や経費の計上根拠、取引の実態、役員報酬や交際費の使途などについて具体的な質問がされます。不明点や疑問点があれば、その場で追加資料の提出を求められることもあります。

調査終了後は、指摘事項の説明や今後の対応について話し合いが行われます。

法人の税務調査でよくある指摘事項と対策

法人がやりがちな経理・会計ミスの具体例

税務調査でよく指摘される経理・会計ミスには、領収書の紛失や保存不備、架空経費の計上、売上の計上漏れ、交際費や福利厚生費の私的流用などがあります。

その他には、現金取引の記録漏れや、従業員への給与計算ミス、源泉所得税の納付漏れも多い指摘事項です。これらの間違いは、日頃の経理管理や内部チェック体制の不備が原因となることが多いため、定期的な見直しと改善が重要です。

赤字計上や利益調整・還付金に関する注意点

赤字計上や利益調整、還付金の申告には特に注意が必要です。赤字が続く場合、実態と異なる経費計上や架空取引が疑われやすくなります。

また、利益調整のために期末に不自然な取引を行うと、税務署から指摘されるリスクが高まります。消費税や法人税の還付申告も、根拠となる書類や取引内容が厳しくチェックされるため、正確な記帳と証憑の保存が不可欠です。

追徴課税・修正申告が必要になる場合の理由

税務調査で申告内容に誤りや漏れが見つかった場合、追徴課税や修正申告が必要となります。追徴課税は、本来納めるべき税額との差額に加え、過少申告加算税や延滞税が課されることがあります。

修正申告は、調査官の指摘を受けて自発的に行う場合と、税務署からの更正通知に基づいて行う場合があります。重大な不正や隠ぺいが認められると、重加算税が課されることもあるため、日頃から正確な申告を心がけましょう。

課税の種類内容
追徴課税本来の税額との差額+加算税・延滞税
修正申告誤りを自発的に訂正
重加算税重大な不正・隠ぺい時に課税

事前対策と調査通知後の準備方法

税務調査の事前対策|日頃の経理管理のポイント

税務調査に備えるためには、日頃から正確な経理管理を徹底することが最も重要です。帳簿や証憑書類は法定保存期間を守って整理・保管し、取引の根拠となる資料も漏れなく揃えておきましょう。

また、経費の計上基準や現金管理ルールを明確にし、定期的に内部監査やチェックを行うことで、ミスや不正の早期発見につながります。

経理担当者だけでなく、経営者自身も経理の流れを把握し、疑問点があれば専門家に相談する習慣を持つことが大切です。

税務署から通知が来た時の対応ステップ

税務署から調査通知が届いたら、焦らず、まずは落ち着いて内容を確認しましょう。通知書には調査日程や調査対象税目、必要書類などが記載されています。

日程調整が必要な場合は、速やかに税務署へ連絡し、都合の良い日を相談します。また、調査対象期間の帳簿や証憑書類を準備し、経理担当者や顧問税理士と事前に打ち合わせを行いましょう。

不明点や不安があれば、専門家に相談することも大切です。

調査に備えて準備すべき資料・セットと注意事項

税務調査に備えて準備すべき主な資料は、会計帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)、証憑書類(領収書・請求書・契約書)、銀行通帳、現金出納帳、給与台帳、固定資産台帳などです。

また、調査対象期間の資料だけでなく、関連する過年度の資料も用意しておくと安心です。資料は分かりやすく整理し、調査官からの質問にすぐ対応できるようにしておきましょう。

個人情報や機密情報の取り扱いにも注意が必要です。

専門家(税理士・顧問)への依頼・無料相談の活用方法

税務調査への対応や事前対策は、税理士や顧問会計士などの専門家に依頼するのが安心です。専門家は、調査官とのやり取りや資料の準備、指摘事項への対応などをサポートしてくれます。

他には、無料相談窓口や税務署の相談会を活用することで、初歩的な疑問や不安も解消できます。調査通知が届いた時点で早めに専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが、トラブル回避のポイントです。

問合せ

税務調査に関するよくある悩みとQ&A

法人に税務調査が入る確率や頻度はどれくらい?

法人に税務調査が入る確率は、一般的に年間1.5~2.5%程度とされています。つまり、毎年全ての法人が調査を受けるわけではなく、数年に一度のペースが目安です。

ただし、売上や利益の急増、業種特性、不自然な申告内容がある場合は、調査頻度が高まる傾向があります。また、長期間調査が入っていない法人や、過去に指摘事項が多かった法人も優先的に選定されやすいです。

税務調査と国勢調査との違い

税務調査と国勢調査は、目的も内容も全く異なります。税務調査は、法人や個人の税務申告が正しいかを確認するために税務署が行うものです。

一方、国勢調査は、国が人口や世帯の実態を把握するために5年ごとに実施する統計調査です。税務調査は納税義務の履行確認、国勢調査は統計データ収集が目的です。

調査名目的実施主体
税務調査税務申告の適正確認税務署・国税局
国勢調査人口・世帯の統計把握総務省

適切な対策で法人税務調査に恐れず備えを

法人税の税務調査は、正しい経理と申告を行っていれば過度に恐れる必要はありません。日頃から帳簿や証憑書類の整理、経理体制の見直し、専門家への相談を徹底することで、万が一調査が入っても落ち着いて対応できます。

調査の流れや指摘事項、事前対策をしっかり理解し、適切な準備を進めておきましょう。不安な場合は、早めに税理士や専門家に相談することが、安心経営への第一歩です。

問合せ

執筆者プロフィール

北村 嘉章
北村 嘉章
所属:四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
肩書:
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族:妻と長女と長男の4人家族
職歴:日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

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