税務調査が10年以上来ない法人(会社)の特徴や対策

税務調査が10年以上来ない法人

この記事は、法人経営者や経理担当者、個人事業主の方々に向けて「税務調査が10年以上来ない法人」について、その特徴や理由、注意点、そして今後の対策まで、経験豊富な税理士の北村嘉章税理士(北村税理士事務所)がわかりやすく解説します。

税務調査がなぜ長期間来ないのか不安に感じている方や、今後のリスク管理を考えている方にとって、安心して経営を続けるための知識と実践的なポイントをまとめています。

目次

税務調査が10年以上来ない法人とは?特徴と調査の基本

まず税務調査が10年以上来ない法人は珍しいことではありません。近年の傾向として実調率は低下しており、国税庁の最新統計(令和5事務年度)では約1.9%となっています。これは統計上、約50年に1度という計算になります。

その為、一般的に税務調査は3~5年に一度の頻度で行われることが多いですが、実際には10年以上調査が来ない法人も少なくありません。

このような法人には、売上や利益が安定している、現金取引が少ない、過去に指摘歴がないなど、いくつかの共通した特徴があります。税務調査の基本的な流れや、どのような法人が調査対象となるのかを理解することで、リスク管理や今後の対策に役立てることができます。

税務調査の流れと法人が対象になる条件

税務調査は、税務署が法人の申告内容や経理状況に疑問を持った場合や、定期的な監査の一環として実施されます。調査の流れは、事前通知、調査当日の実地調査、調査後の指摘や是正指導というステップで進みます。

法人が調査対象となる条件には、売上規模や業種、過去の申告内容、現金取引の多寡、不審な取引の有無などが影響します。また、税務署は過去の調査結果や他の情報も参考にして、調査対象を選定しています。

税務調査が10年以上来ない個人・法人の共通点

税務調査が10年以上来ない法人や個人事業主には、いくつかの共通点が見られます。まず、売上や利益が安定しており、経費の計上が適正であることが挙げられます。

また、現金取引の割合が少なく、取引の多くが銀行振込など記録が残る方法で行われている場合も、調査対象になりにくい傾向があります。

さらに、過去に税務調査で大きな指摘や修正がなかった法人も、長期間調査が来ないケースが多いです。

以下のような法人は税務調査が10年以上来ないケースが多いです。

  • 売上・利益が安定している
  • 現金取引が少ない
  • 経費処理が適正
  • 過去に大きな指摘歴がない

税務調査が長期間来ない法人の特徴

税務調査が長期間来ない法人には、いくつかの明確な特徴があります。売上規模が小さい、現金商売ではない、帳簿や資料がしっかり整備されている、税理士が関与しているなどが代表的です。

また、業種や業務内容によっても調査の頻度は大きく異なります。これらの特徴を理解することで、自社がどのようなリスクを持っているのか、また今後どのような対策が必要かを判断しやすくなります。

売上規模と会社の規模との関係

売上規模が小さい法人や、従業員数が少ない会社は、税務調査の優先順位が低くなりやすい傾向があります。税務署は限られた人員で効率的に調査を行うため、売上規模が大きい法人や、急激に売上が増加した法人を優先的に調査対象とすることが多いです。

売上が1,000万円以下の小規模法人は、以前は免税事業者が多かったものの、インボイス制度導入後は売上1,000万円以下でも課税事業者を選択する法人が増えています。

そのため、売上規模が小さくても消費税の申告内容(2割特例の適用など)に関する税務署からの確認や調査が入るリスクは以前より高まっています。

業種・業務内容で変わる調査の頻度

業種や業務内容によっても、税務調査の頻度は大きく異なります。例えば、現金商売が多い飲食業や小売業、建設業などは、売上のごまかしや経費の水増しが起こりやすいため、調査の対象になりやすいです。

また、IT業やコンサル業は、かつては調査が少ないと言われていましたが、近年では架空外注費の計上や私的経費の混入が見えにくい業種として、税務署が積極的に調査を行う『重点対象』となるケースが増えています。

帳簿・資料・現金管理の信頼性と整備状況

帳簿や資料がしっかり整備されており、現金管理も適切に行われている法人は、税務署からの信頼度が高くなります。帳簿の記載ミスや領収書の不備が少ない場合、調査の必要性が低いと判断されることが多いです。

また、クラウド会計ソフトの導入や、定期的な会計監査を受けている法人も、調査のリスクが低くなります。

過去の調査結果や税務署との関係性

過去に税務調査を受けて大きな指摘や修正がなかった法人は、税務署から「問題が少ない」と判断されやすく、次回調査までの期間が長くなる傾向があります。

他には、税務署とのコミュニケーションが良好で、日頃から適切な申告や相談を行っている法人も、調査のリスクが低くなります。一方で、過去に重大な指摘や修正申告があった場合は、再調査の対象となりやすいので注意が必要です。

一般的に税務調査が来ないケースの例

税務調査が来ないケースとしては、売上規模が小さい、現金取引がほとんどない、経費の計上が適正、税理士が関与している、過去に調査で問題がなかったなどが挙げられます。

また、法人設立から間もない場合や、業種的に不正が起こりにくい場合も、調査の頻度が低くなります。ただし、これらのケースでも絶対に税務調査が来ないというわけではないので油断は禁物であり、日々の経理管理や申告の正確さが重要です。

税務調査が来ない理由・来なくなるリスクとは

税務調査が長期間来ない理由には、法人の経理や申告が適正であることや、税務署が優先的に調査すべきリスクが低いと判断していることが挙げられます。

しかし、調査が来ないことが必ずしも安心材料とは限らず、見逃されているリスクや、突発的な調査の可能性もゼロではありません。また、税制改正や社会情勢の変化によって、今後調査対象となるリスクが高まる場合もあるため、常に最新の情報と対策が求められます。

脱税や不審な取引がない場合の傾向

脱税や不審な取引がない法人は、税務署からの信頼度が高く、調査の優先順位が下がる傾向があります。特に、売上や経費の計上が明確で、現金取引が少なく、取引先との関係も透明性が高い場合は、調査の必要性が低いと判断されやすいです。

ただし、過去に問題がなかった場合でも、突発的な情報提供や社会的な動きによって調査が入ることもあるため、油断は禁物です。

申告内容・確定申告の正確さとチェックポイント

申告内容が正確で、確定申告の際にミスや漏れがない法人は、税務署からの信頼を得やすくなります。特に、売上や経費の計上が適正で、領収書や請求書などの証憑書類がしっかり保存されている場合、調査のリスクが低くなります。

一方で、申告内容に不備や不自然な点があると、調査の対象となる可能性が高まるため、日々のチェックが重要です。

税理士(顧問・税理士法人)や会計事務所の関与

税理士や会計事務所が関与している法人は、帳簿や申告内容の正確性が高くなるため、税務署からの信頼度が上がります。また、税理士が定期的にチェックを行うことで、ミスや不正のリスクを未然に防ぐことができます。

そのため、結果的に税理士の関与がある法人は、調査の頻度が低くなる傾向があります。

問合せ

売上・取引規模に応じた調査対象の判断基準

税務署は、売上や取引規模が大きい法人を優先的に調査対象とする傾向があります。特に、急激に売上が増加した場合や、取引先が多岐にわたる場合は、調査のリスクが高まります。

一方で、売上規模が小さく、取引内容がシンプルな法人は、調査の優先順位が下がるため、長期間調査が来ないケースが多いです。

売上規模調査リスク
小規模低い
中規模中程度
大規模高い

税務調査が来ない法人が注意すべきポイント

税務調査が来ない法人が注意すべきポイント

税務調査が長期間来ていない法人でも、完全に安心はできません。突然の調査や、過去のミスが発覚するリスクは常に存在します。また、社会的な動きや税制改正によって、これまで調査対象外だった法人が急に調査対象となることもあります。

日々の経理管理や申告内容の見直しを怠らず、リスクに備えることが重要です。

油断が招くリスクと知っておきたい事例

長期間税務調査が来ていないことで油断し、経理や申告のミスが積み重なると、いざ調査が入った際に大きな指摘を受けるリスクがあります。実際に、10年以上調査がなかった法人が突然調査を受け、多額の追徴課税やペナルティを課された事例も存在します。

日々の業務で「大丈夫だろう」と思わず、定期的な見直しや専門家のチェックを受けることが大切です。

突発的な強制調査・任意調査の可能性

税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。通常は任意調査が多いですが、脱税や重大な不正が疑われる場合は、強制調査が行われることもあります。

長期間調査がなかった法人でも、突発的な情報提供や社会的な動きによって、突然調査が入るリスクがあるため、常に備えておくことが重要です。

不審点・ミスが見逃されやすい事項の例

税務調査が長期間来ていない法人では、経費の計上ミスや、領収書の紛失、現金管理の不備などが見逃されやすい傾向があります。また、交際費や福利厚生費の使い方、役員報酬の設定なども、調査時に指摘されやすいポイントです。

これらの事項は、日々の業務で意識的にチェックし、定期的に見直すことが重要です。

以下のような内容は意識的にチェックが必要です。

  • 経費計上ミス
  • 領収書の紛失
  • 現金管理の不備
  • 交際費・福利厚生費の使い方
  • 役員報酬の設定

税務調査が突然来た場合の対応と事前対策

税務調査が突然来た場合でも、慌てず落ち着いて対応することが重要です。事前に帳簿や証憑書類を整理し、必要な書類をすぐに提出できる体制を整えておくことで、調査時のトラブルを最小限に抑えることができます。

また、税理士や専門家と連携し、調査当日の流れや対応ポイントを事前に確認しておくと安心です。日頃からの備えが、いざという時の大きな安心につながります。

当日の流れと必要書類、対応のポイント

税務調査当日は、税務署職員が会社に訪問し、帳簿や証憑書類の確認、質疑応答などが行われます。必要書類としては、総勘定元帳、仕訳帳、領収書、請求書、契約書、給与台帳などが挙げられます。

調査官への対応のポイントは、事実に基づいて正直に答えること、わからないことは無理に答えず税理士に相談することです。また、調査官の質問には冷静に対応し、必要に応じて追加資料を提出しましょう。

帳簿・領収書・請求書の保存・整理方法

帳簿や領収書、請求書は、税法上7年間の保存義務があります。紙媒体だけでなく、電子データでの保存も認められているため、クラウド会計ソフトなどを活用して効率的に管理しましょう。

書類は日付順や取引先別にファイリングし、必要な時にすぐ取り出せるようにしておくことが大切です。定期的に整理・点検を行い、紛失や破損を防ぐ工夫も必要です。

税理士や専門家による無料相談や立ち会いの活用

税務調査の際は、税理士や会計士などの専門家に立ち会ってもらうことで、調査官とのやり取りがスムーズになり、不要なトラブルを防ぐことができます。他には、無料相談を活用して事前に不安点を解消しておくのも有効です。

専門家のアドバイスを受けることで、調査時の対応力が格段に向上します。日頃から信頼できる税理士と関係を築いておくことが、安心経営の第一歩です。

今後税務調査が来る法人の特徴と対策の提案

今後税務調査が来る可能性が高い法人には、売上や取引規模が拡大している会社や、業種的に現金取引が多い会社などが挙げられます。

また、経理体制が不十分な場合や、過去に指摘歴がある場合も注意が必要です。これからの時代は、クラウド会計やデジタル化を進め、日々の経理管理を徹底することが重要です。

信頼される企業体質を築くことで、調査リスクを最小限に抑えましょう。

規模拡大・売上高増加時のリスクとチェック

会社の規模拡大や売上高の急増は、税務署が注目するポイントです。特に、売上が1,000万円を超えて消費税の課税事業者となるタイミングや、従業員数が増加した場合は、経理体制の見直しが必要です。

売上や経費の計上方法、現金管理のルールなどを再確認し、リスクを未然に防ぎましょう。

クラウド会計・記帳体制の整備の重要性

クラウド会計ソフトの導入や、記帳体制の整備は、税務調査対策として非常に有効です。リアルタイムでのデータ管理や、証憑書類の電子保存が可能となり、調査時にも迅速に対応できます。

また、経理担当者の教育や、定期的な内部監査を実施することで、ミスや不正のリスクを大幅に減らすことができます。

信頼される企業体質づくりと日々の税務意識

税務調査が来ないことに安心せず、日々の税務意識を高く持つことが大切です。会社のコンプライアンスを重視し、透明性の高い経営を心がけることで、税務署からも信頼される企業体質を築くことができます。

また、従業員への税務教育や、社内ルールの明確化も、リスク管理の一環として重要です。

税務調査が10年以上来ない法人になるために

税務調査が10年以上来ない法人には、経理や申告が適正である、現金取引が少ない、税理士が関与しているなどの特徴があります。
調査が来ないことは安心材料にもなりますが、常に油断は禁物です。

突然の調査や過去のミスが発覚するリスクもあるため、日々の経理管理や申告内容の見直し、専門家との連携を怠らないことが大切です。

クラウド会計や内部監査の導入、従業員教育などを通じて、信頼される企業体質を築き、安心して経営を続けましょう。

問合せ

執筆者プロフィール

北村 嘉章
北村 嘉章
所属:四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
肩書:
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族:妻と長女と長男の4人家族
職歴:日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

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