法人カードのポイント、税務調査で困らない会計処理を解説

法人カードのポイントと税務調査

この記事は、法人カードを利用している経営者や経理担当者、個人事業主の方に向けて法人カードで貯まるポイントの税務処理や会計処理、税務調査で指摘されないための管理方法について、経験豊富な税理士の北村嘉章税理士(北村税理士事務所)がわかりやすく解説します。

税務調査で困らないためのポイント運用の注意点や、実際のトラブル事例、社内規定の整備方法など、実務で役立つ情報を網羅しています。

法人カードのポイントを安心して活用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

法人カードのポイントとは?基礎知識と仕組みを解説

法人カードのポイントとは、法人名義で発行されたクレジットカードを利用した際に、利用金額に応じて付与される特典ポイントのことです。

このポイントは、商品やサービスへの交換、キャッシュバック、マイルへの移行など、さまざまな用途で活用できます。法人カードのポイントは、会社の経費支出に対して付与されるため、個人カードのポイントとは扱いが異なります。

また、ポイントの付与や利用には会計処理や税務上の注意点があり、適切な管理が求められます。法人カードのポイント制度を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。

法人カードと個人カードの違い

法人カードと個人カードの最大の違いは、カードの名義と利用目的にあります。法人カードは会社名義で発行され、主に事業経費の決済に利用されます。

一方、個人カードは個人名義で発行され、私的な支出に使われるのが一般的です。法人カードの利用明細は経理処理や税務申告に直結するため、ポイントの扱いも会社の資産として管理する必要があります。

個人カードで法人の支払いを行うと、税務調査で問題視されるケースもあるため、用途に応じて正しく使い分けることが大切です。

項目法人カード個人カード
名義法人(会社・代表者併記含む)個人
利用目的事業経費(仕入れ、交通費等)私的支出(生活費、娯楽費)
ポイントの帰属会社(法人)個人

ポイント付与・還元率の仕組み

法人カードのポイント付与や還元率は、カード会社やカードの種類によって異なります。一般的には、利用金額の0.5%~1.5%程度がポイントとして還元されるケースが多いです。

ポイントは、カード利用明細に応じて自動的に付与され、一定数貯まると商品やサービス、マイル、キャッシュバックなどに交換できます。

法人カードの場合、ポイントの付与条件や還元率が個人カードよりも有利な場合もありますが、利用規約や会計処理のルールを事前に確認しておくことが重要です。

また、ポイントの有効期限や利用制限にも注意が必要です。

カード種類還元率主な交換先
一般法人カード0.5%~1.0%商品券・家電・マイル
ゴールド法人カード1.0%~1.5%キャッシュバック・旅行券
特典型カード0.5%~2.0%楽天ポイント・Amazonギフト券

楽天ポイント・マイルなどポイント種類別の特徴

法人カードで貯まるポイントには、楽天ポイントやTポイント、航空会社のマイルなど、さまざまな種類があります。楽天ポイントは楽天市場や提携店舗で幅広く使える汎用性が魅力で、マイルは航空券や旅行商品への交換に特化しています。

ポイントの種類によって、交換先や利用範囲、還元率が異なるため、自社の利用目的に合ったカードを選ぶことが大切です。また、ポイントの一部は現金同等物として扱われる場合もあり、会計処理や税務上の取り扱いに注意が必要です。

多くのカードや航空会社の規約では『ポイント・マイルは個人に帰属する』とされていますが、税務署は『会社の経費で生じた経済的利益は会社のもの』という実質基準で判断します。そのため、規約を盾にして社長が私的にマイルを使うことは、給与認定されるリスクが高い危険な行為です。

ポイントの種類ごとの特徴を理解し、最適な運用を目指しましょう。

法人カードのポイント、税務処理の考え方

法人カードで貯まったポイントは、会社の経費支出に対して付与されるため、原則として会社の資産とみなされます。税務上は、ポイントが付与された時点では課税や会計処理の必要はありませんが、ポイントを利用した際には「値引き」や「雑収入」として処理する必要があります。

また、ポイントの私的流用や個人利用が発覚した場合、税務調査で否認されるリスクがあるため、ポイントの取得・利用履歴を明確に管理し、適切な会計処理を行うことが重要です。

税理士や専門家と相談しながら、正しい税務処理を心がけましょう。

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ポイントは誰のもの?社長・従業員の考慮点

法人カードで貯まったポイントは、原則として会社のものです。「社長が貯まったマイルで家族旅行に行く」「従業員がポイントで個人的なゲームソフトを買う」。これらはすべて税務リスクの高い行為です。

法人カードのポイントは会社の資産であるため、個人的な利用は「会社から個人への給与(賞与)」とみなされる可能性があります。

社長や従業員が個人的に利用することは、会社資産の私的流用とみなされ、税務調査で指摘される可能性があります。従業員がポイントを利用する場合は、会社の承認や社内規定に基づいた運用が必要です。

また、ポイントを現金や商品券に交換した場合、その使途や管理方法を明確にしておくことが求められます。ポイントの帰属や利用ルールを社内で明確にし、トラブルを未然に防ぎましょう。

法人利用と個人利用の境界線

税務調査では「事業関連性」が厳しくチェックされます。その為、法人カードのポイントを適切に管理するためには、法人利用と個人利用の区別を明確にすることが重要です。

法人利用とは、会社の事業活動に直接関連する支出に対してポイントを付与・利用することを指します。一方、個人利用は私的な買い物や家族のための支出など、事業と無関係な用途でポイントを使うことです。

税務調査では、領収書や明細書をもとに利用目的が厳しくチェックされるため、支出ごとに証憑を整備し、個人利用が混在しないよう注意しましょう。

ポイント取得・利用と経費精算の関係

法人カードのポイント取得や利用は、経費精算の際にも注意が必要です。ポイントを利用して商品やサービスを購入した場合、実際の支払額とポイント分の値引き額を明確に区分し、経費精算書に正確に記載しましょう。

ポイント利用分を経費として二重計上しないよう、経理担当者と連携して管理体制を整えることが大切です。また、ポイント利用時の領収書や明細も必ず保管し、税務調査時に説明できるようにしておきましょう。

法人カードとポイントの会計処理・仕訳方法

法人カードのポイントは、付与時点では会計処理の必要はありませんが、利用時には「値引き」または「雑収入」として仕訳します。
例えば、ポイントを使って商品を購入した場合は、購入金額からポイント分を差し引いた金額を経費計上し、ポイント分は「雑収入」や「値引き」として処理します。

ポイントを現金や商品券に交換した場合も、同様に「雑収入」として計上するのが一般的です。会計ソフトや経理システムを活用し、ポイント利用の都度、正確な仕訳を行いましょう。

取引内容仕訳例
ポイント利用で商品購入(借方)消耗品費/(貸方)現金・雑収入
ポイントを現金化(借方)現金/(貸方)雑収入

税務調査でチェックされるポイント運用の注意点

税務調査では、法人カードのポイント運用が適切に行われているかが厳しくチェックされます。特に、ポイントの私的流用や個人利用、経費の二重計上、証憑の不備などが指摘されやすいポイントです。

また、ポイント還元が課税対象となるケースや、インボイス制度導入後の処理方法にも注意が必要です。税務調査で困らないためには、日頃からポイントの取得・利用履歴を明確に管理し、社内規定や運用ルールを整備しておくことが重要です。

ポイントの私用・個人的利用リスクと否認事例

法人カードのポイントを社長や従業員が私的に利用した場合、税務調査で否認されるリスクが非常に高くなります。例えば、会社の経費で貯めたポイントを個人の買い物や家族旅行に使った場合、会社の資産を私的流用したとみなされ、経費の否認や追徴課税の対象となることがあります。

実際の否認事例としては、ポイント利用履歴の不備や、利用目的が不明確な場合に指摘されるケースが多いです。このようなリスクを回避するためには、ポイントの利用目的を明確にし、証憑をしっかりと整備しておくことが不可欠です。

社長が使う場合の社内規定と運用ルール

社長が法人カードのポイントを利用する場合も、必ず社内規定や運用ルールを整備しておく必要があります。ポイントの利用目的や承認フロー、利用上限などを明文化し、従業員にも周知徹底することが重要です。

また、ポイント利用時には必ず領収書や明細を保管し、経理担当者がチェックできる体制を整えましょう。社長だからといって私的利用は原則NGであり、会社の資産として適切に管理することが求められます。

社内規定の整備は、税務調査時のリスク回避にもつながります。

ポイント還元の課税・一時所得となるケース

法人カードのポイント還元が課税対象となるケースもあります。例えば、ポイントを現金や商品券に交換し、会社の収益として計上した場合は「雑収入」として課税対象となります。

また、ポイントを個人が私的に利用した場合、その分が役員報酬や一時所得とみなされ、個人の所得税課税対象となることもあります。

ポイントの利用形態によって課税区分が異なるため、税理士など専門家と相談しながら適切な処理を行いましょう。

利用形態課税区分
会社で利用値引き・雑収入
個人で私的利用役員報酬・一時所得

インボイス制度導入後のポイント処理のポイント

2023年10月からインボイス制度が導入され、法人カードのポイント処理にも新たな注意点が生じています。ポイント利用による値引き分は、インボイス(適格請求書)上で明確に区分し、実際の支払額と値引き額を正確に記載する必要があります。

また、ポイント利用分の消費税計算や仕訳方法も従来と異なる場合があるため、経理担当者は最新の制度に対応した管理体制を整えましょう。

インボイス制度下では、証憑の整備と正確な記帳が一層重要となります。

会計上は『値引き』『雑収入』どちらの処理も考えられますが、消費税法(インボイス制度)上は、受け取ったレシート(適格請求書)の記載に従う必要があります。 レシートの消費税額が『ポイント値引き後の金額』に基づいている場合、経理処理も必ず『値引き(仕入高の減額)』として処理しなければなりません。

誤って経費を全額計上すると、消費税の過大控除となるため注意が必要です。

税務調査で困らない!法人カードのポイント管理・証憑整備のコツ

税務調査で困らない法人カードのポイント

税務調査で困らないためには、法人カードのポイント管理と証憑整備が不可欠です。ポイントの付与・利用時には必ず領収書や明細を保管し、経費精算書と突合できるようにしておきましょう。

また、支出の種類ごとに管理方法を工夫し、定期的に運用状況を見直すことも大切です。社内ルールや規定を整備し、従業員への周知徹底を図ることで、トラブルや税務リスクを未然に防ぐことができます。

ポイント付与・利用時の領収書・明細の保管方法

法人カードのポイントを付与・利用した際には、必ず領収書や利用明細を保管することが重要です。ポイント利用分が明細に記載されている場合は、その部分をハイライトし、経費精算書と一緒にファイリングしておきましょう。

電子明細の場合は、PDFや画像データとして保存し、検索しやすいフォルダ構成を作ると便利です。税務調査時には、ポイント利用の証拠としてこれらの書類が求められるため、最低でも7年間は保管することをおすすめします。

領収書や明細の紛失を防ぐため、クラウド会計ソフトや経費精算システムの活用も有効です。

以下のような点に注意しながら管理を行いましょう。

  • 紙の領収書は日付・用途ごとにファイリング
  • 電子明細はPDFや画像で保存・バックアップ
  • 経費精算書と突合できるよう管理
  • 最低7年間の保管を推奨

支出別(交際費・経費・高額支出等)管理ノウハウ

法人カードのポイント管理は、支出の種類ごとに方法を工夫することが大切です。交際費や高額支出の場合は、特に証憑の整備と利用目的の明確化が求められます。

経費精算時には、ポイント利用分を明細に記載し、支出ごとに管理台帳を作成すると、後からの確認が容易になります。高額支出の場合は、社内での承認フローを厳格にし、ポイント利用の妥当性を第三者がチェックできる体制を整えましょう。

支出別に管理ルールを設けることで、税務調査時の説明責任を果たしやすくなります。

証明・チェック体制、定期的な運用見直し

法人カードのポイント管理では、証明・チェック体制の構築と定期的な運用見直しが不可欠です。経理担当者や管理責任者が、ポイントの付与・利用履歴を定期的にチェックし、不正利用やミスがないかを確認しましょう。

また、社内規定や運用ルールが実態に合っているか、年に1回程度は見直しを行うことが望ましいです。内部監査や外部専門家によるチェックも有効で、税務調査時のリスクを大幅に低減できます。

運用状況の可視化と継続的な改善が、トラブル防止のカギとなります。

NG事例と防止のための社内ルール・社内規定整備

法人カードのポイント管理でよくあるNG事例には、私的利用の黙認、証憑の未整備、経費の二重計上などがあります。これらを防ぐためには、社内ルールや規定を明文化し、従業員全員に周知徹底することが重要です。

例えば、ポイントの利用目的や承認フロー、証憑保管の義務などを明記し、違反時のペナルティも設定しましょう。
定期的な研修やマニュアルの配布も効果的です。

社内規定の整備は、税務調査時の説明責任を果たすうえで不可欠な対策となります。

よくある法人カードポイントの問題・トラブル事例と対策

法人カードのポイント運用では、個人利用の発覚や経費の二重計上、証憑不備など、さまざまなトラブルが発生しがちです。これらの問題は、税務調査で指摘されるだけでなく、社内の信頼関係やガバナンスにも悪影響を及ぼします。

トラブルを未然に防ぐためには、日頃からの管理体制強化と、専門家への相談が有効です。ここでは、よくある問題事例とその対策について解説します。

個人利用がバレる理由・税務指摘されるケース

法人カードのポイントを個人利用した場合、税務調査で発覚する主な理由は、利用明細や領収書の内容に不自然な点があることです。

例えば、家電や旅行、私的な買い物など、事業と無関係な支出が明細に記載されていると、税務署は個人利用を疑います。また、ポイント利用分の証憑が不足していたり、経費精算書と突合できない場合も指摘の対象となります。

税務調査官は、過去の類似事例や不自然な取引パターンをもとにチェックするため、個人利用は必ず発覚すると考えておくべきです。
適切な証憑管理と、私的利用の禁止を徹底しましょう。

税理士法人や専門家に依頼すべき判断基準と相談方法

法人カードのポイント管理や税務処理に不安がある場合は、税理士法人や専門家に相談するのが安心です。特に、ポイントの私的利用が疑われるケースや、会計処理が複雑な場合、インボイス制度対応などは専門家の知見が不可欠です。

相談時は、ポイント利用履歴や経費精算書、社内規定などの資料を用意し、具体的な状況を説明しましょう。また、定期的な顧問契約を結ぶことで、最新の法改正や税務調査対策にも迅速に対応できます。

専門家のアドバイスを活用し、リスクを最小限に抑えましょう。

ポイント交換・キャッシュバックで注意すべき点

法人カードのポイントを商品やサービス、キャッシュバックに交換する際は、会計処理や税務処理に注意が必要です。キャッシュバックや商品券への交換は「雑収入」として計上し、課税対象となる場合があります。

また、交換先によっては消費税の取り扱いが異なるため、経理担当者は事前に確認しておきましょう。ポイント交換時の明細や領収書も必ず保管し、税務調査時に説明できるようにしておくことが大切です。

不明点があれば、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

法人カードポイントの賢い活用と効率化・リスクのまとめ

法人カードのポイントは、正しく管理・運用すれば経費削減や福利厚生の充実に役立ちますが、税務リスクやトラブルも潜んでいます。ポイントの取得・利用履歴を明確にし、社内規定や証憑管理を徹底することで、安心してポイントを活用できます。

また、税理士や専門家のサポートを受けることで、法改正や税務調査にも柔軟に対応可能です。リスクを理解し、賢く効率的にポイントを活用しましょう。

問合せ

執筆者プロフィール

北村 嘉章
北村 嘉章
所属:四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
肩書:
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族:妻と長女と長男の4人家族
職歴:日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

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