日本政策金融公庫

新創業融資制度の返済期間の特徴と選び方

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合には、申し込みの時にいろいろな条件を決めなければなりませんが、そのひとつに「返済期間」があります。

多くの方が返済期間は長い方が有利と考えていますが、あまり期間が長い場合には公庫で認めてもらいにくくなりますし、支払う金利も高くなるため、ご自身の計画にあった適切な期間の設定をする必要があります。

この記事では新創業融資制度を利用する場合に返済期間をどのくらいにすればよいのか、正しい返済期間の決め方と融資制度との組み合わせについて解説いたします。

 

新創業融資制度の返済期間は、ベースの融資で決まる

新創業融資制度のベースとなる代表的な融資の返済期間は、以下の通りとなります。

ベースとなる融資制度の返済期間

「新規開業資金」

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

 

「女性、若者/シニア起業家支援資金」

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

 

「新事業活動促進資金」

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

 

「一般貸付」

運転資金 5年以内(特に必要な場合7年以内)<うち据置期間1年以内>

設備資金 10年以内 <うち据置期間2年以内>

特定設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

 

「一般貸付(生活衛生貸付)」

設備資金 13年以内 <うち据置期間1年以内、返済期間が7年超の場合2年以内>

 

「据置期間」とは?

「据置期間」とは、融資の際に「元本の返済が猶予される期間」のことを意味します。

この据置期間中は、利息だけを支払えばよく、元金の支払いが不要なため、上手に利用すれば返済の負担を軽くすることができます。

 

ただし、注意しなければならないのが、据置期間を利用した場合には、その分返済期間が延びるわけではないということです。

据置期間は返済期間に含まれるため、これを利用した場合には、据え置かれた分の機関は他の期間へ上乗せされることとなります。

 

たとえば、返済期間5年(60ヶ月)の場合に6ヶ月の据置期間を利用した場合には返済期間は60ヶ月のままとなるため、残りの54ヶ月(60-6ヶ月)で返済をしなければならなくなります。

仮に借入金額が600万円、返済期間5年の場合、据置期間を使わない場合の毎月の元金の返済額は10万円/月となりますが、6ヶ月の据え置きを利用した場合の元本の支払い額は11.1万円/月となります。

 

このように据置期間を利用した場合には、その期間が長くなるほどそれが終了した後の返済負担が大きくなることに注意する必要があります。

据置期間については下記の記事でより詳しく解説しております。
https://kitamura-tax.com/startup-loan/jfc/736/

 

最適な返済期間はどうやって決めるべきか?

本来、返済期間は、申込人の返済力にもとづいて決定すべきものです。

申込人の返済力は次の式で表されます。

「経常利益+減価償却額/月」

 

仮に事業計画書で予測される経常利益が10万円、減価償却額が5万円の場合、返済可能利益は15万円/月となるため、借入額が600万円ならば最短で返済できる期間は40ヶ月(600万円/10万円+5万円)となります。

 

したがって、これよりも返済期間が短すぎる場合は毎月の返済額が過大となるため、返済ができなくなってしまう可能性があります。

しかし、これとは逆に返済期間が長すぎる場合には、いつまでたっても返済が終わらないだけでなく、その分、利息を支払う期間が長くなり利息の総支払額が大きくなります。

また、一般的に金融機関では、あまり長い返済期間を認めないことが多いため、返済期間を決めるときには、自分の返済可能額とバランスの取れたものとなっているかを考える必要があります。

返済期間が短い場合と長い場合のメリット・デメリットは以下のようになります。

 

〇 返済期間が短い場合

<メリット>
  • 支払いが早く終わる
  • 利息の総支払額が少なくなる
<デメリット>
  • 1回あたりの支払額が大きくなる
  • 支払いができなくなるリスクが高まる

 

〇 返済期間が長い場合

<メリット>
  • 1回あたりの支払額が少なくて済む
  • 余裕を持った経営をしやすい
<デメリット>
  • いつまでたっても支払いが終わらない
  • 長い返済期間は金融機関に歓迎されない
  • 利息の総支払額が多くなる

 

返済期間は長い方が良い?短い方が良い?

先ほど返済期間が長くする場合と短くする場合のメリットとデメリットについて解説しました。

どちらにもそれぞれメリットデメリットがあるため、それを踏まえた上でどちらが良いか検討しましょう。

新創業融資制度の返済期間は、事業の状況や将来の計画などによって、長い方が良い場合もあれば、短い方が良い場合もあります。

慎重に検討して、適切な返済期間を決めることが重要です。

 

返済期間を決めるときの注意点

最後に、新創業融資制度の返済期間を決める際の注意点について解説します。

運転資金と設備資金とでは、返済期間の限度が異なる

運転資金と設備資金とでは、金融機関が設定している返済期間の長さが異なるのが一般的です。

日本政策金融公庫の場合は、運転資金の限度は7年、設備資金の限度は20年が標準的な期間となっています。

したがって、運転資金についてはこの7年以内で返済しなければならないため、運転資金の額借入額が高額な場合には毎月の返済額が大きくなることとなります。

 

据置きを希望しても、必ず適用されるわけではない

据置期間は申し込んだから、必ず希望通りの期間になるというわけではありません。

具体的な期間は、申込人の資力や経験、事業計画書の内容などを総合的に考慮して、審査により決められます。

 

返済期間が長くなると利息の支払い総額が増える

金利が大きい場合には、その分、返済額の総額が多くなりますが、返済期間が長くなる場合も同様に支払額が大きくなります。

仮に、融資額600万円、金利が2.5%のケースで返済期間が5年と6年の場合とでは利息の支払額に次のような差が生じます。

  • 返済期間5年の場合の利息総支払額 381,218円
  • 返済期間6年の場合の利息総支払額  456.216円

 

まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、2022.12現在の金利は2.28〜3.25%となっており、具体的にどの程度の金利が適用されるかは申込人の属性や申込みの内容により異なりますが、仮に同じ金利の場合でも、返済期間が長いほど利息の支払い額が多くなることに注意が必要です。

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