日本政策金融公庫

債務整理をした後に融資を受けることはできるの?

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

これから融資を申し込もうとされる方の中には「過去に債務整理していても借りられるのか?」、「融資にどの程度の影響があるのか?」とご心配されている方もいらっしゃるかと思います。

たしかに、過去に債務整理の履歴がある場合、そうでない場合と比べて、融資が借りにくくなりますが、すべてのケースで融資NGとなるわけではありません。

この記事では、債務整理による融資への影響やその目安、融資を受けるためのポイントについて解説いたします。

 

「債務整理」とはどのようなものか?

債務整理といってもいくつかの種類があり、また、その内容やメリット・デメリットも異なります。

 

債務整理の種類

一般的に債務整理とは、金融機関などから借り入れた融資を約定した返済額を下回る金額で返済することや、返済の免除をしてもらうことをいいます。

債務整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4種類があり、後半になるほど免除される額などは多くなりますが、その後のリスクが高まります。

 

① 任意整理

任意整理とは、借入先の債権者と交渉して、返済額の減額や利息・損害金の減免をしてもらうことをいいます。

任意整理は、当事者間の交渉により行われるものであり、この点で法的な手続きによる他の制度と異なります。

② 特定調停

特定調停とは、特定調停法で定められた民事調停手続の一種であり、債務の返済ができなくなるおそれのある債務者の申立てにより,その債務者が負っている金銭債務について裁判所が減免などの調整を行う手続です。

特定調停による合意が成立し,これを調停調書に記載したときは,その記載は確定判決と同一の効力を生じますが、当事者間の合意が前提となるため、必ずしも減免がされるとは限りません。

③ 個人再生

個人再生とは、倒産処理制度の一つであり、民事再生法13章の規定に従い、裁判所の関与のもと、個人債務者の債務の減免をする手続です。

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生との2種類がありますが、個人事業主については前者が適用されます。

④ 自己破産

自己破産とは、借入金の支払いができなくなったときに、裁判所に申し立てることにより、その債務を免除してもらう制度です。

但し、借金を免除してもらうには自己破産をしただけでは足りず、これと同時に債務の免責決定を受ける必要があります。

債務整理をするとどうなるのか?

上記いずれかの債務整理をした場合には、原則として、その情報が個人情報登録機関に報告され、一定期間、その履歴が残ることとなります。

そのため、この履歴が残っている間は新規の借入れをすることが難しくなります。

 

なお、個人の信用情報は、主に次の3つの信用情報登録機関で登録・管理されています。

① KSC(https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/) 全国銀行個人信用情報センター

② JICC(http://www.jicc.co.jp/) 日本情報信用機構

主に信販会社と一部のクレジットカード会社が加盟しています。

③ CIC(http://www.cic.co.jp/) 日本信用情報機構

 

これら3つの会社では、CRINという情報交流システムを作り、事故情報(延滞、未払いなど)の共有化をしていますが、ここで共有されるのは事故情報だけであり、通常の取引情報は対象とされていません。

したがって、例えば、CICの店舗でクレジットを利用し、未払いとなった場合は、その事故情報は他の2つの信用情報機関でも共有されるため、他の機関が参加する店舗でもローンやクレジットの利用ができなくなります。

 

CRINでは、次のような情報が交換されています。

<CRINにより交換される情報>

・識別情報   氏名・生年月日・性別・郵便番号・住所・電話番号・勤務先他

・契約内容   契約日・契約の種類・契約額他

・支払状況   異動発生日・情報の種類・終了の状況(完了・貸倒など)他

・申告内容   紛失などの申告した情報他

なお、事故情報として登録されてしまった場合でも、いつまでもその情報が残るわけではなく、以下の期間を経過すれば事故情報は抹消されます。

<事故情報の登録期間>

① 全銀連
契約終了日または完済日から5年
破産・民事再生情報は決定日から10年内
② JICC
契約継続中および完済日から5年以内
破産等は当該事実発生日から5年以内
③ CIC
契約期間中および契約終了後5年以内(破産等を含む)

ここで気をつけていただきたいのが、「登録期間の開始日」です。

いずれの機関でもその開始日は「契約終了日または完済日から」となっています。

この「契約終了日または完済日」とは、延滞などの事故を起こした日ではなく、完済等によりその事故の原因がなくなった日を意味します。

そのため、支払いをしない場合はいつまでたってもこの期間が開始しないことになります。

 

債務整理中に融資は利用できるか?再開の条件は?

通常、債務整理をしている場合はその内容に応じて5~10年間、新規の融資や追加融資をしてもらうことができなくなります。

しかし、日本政策金融公庫などの一部の金融機関では、状況に応じて貸し出しを行うことがあります。

公庫では、具体的な融資再開の条件を公表していませんが、一般的に再度、融資をしてもらうためには、次のような条件が必要と考えられています。

 

① 一定期間以上の返済実績ができている

既存の融資残高が残っている場合、その支払いを一定期間継続してできていることが必要となります。

どのくらいの期間が必要かについてはケースバイケースとなりますが、目安としては最低でも半額以上の返済ができていることが必要となります。

② 借入れの申込額が大きくない

再度、融資をしてもらうためには、その申込額があまり大きくないということも重要です。

この時点ではまだ十分に信用の回復ができていないため、申込額も自ずと小さなものとなります。

事業規模にもよりますが、通常の中小企業であれば300万円以内を目安とした方がよいでしょう。

③ 家賃や公共料金、税金などの支払いがキチンとできている

金融機関が企業の信用力を見るうえで重視するのが、家賃や公共料金、税金といった、定期的に支払うものの返済履歴です。

これにはクレジットカードや携帯料金の支払い、住宅を持っている方については住宅ローンなども含みます。

なお、金融機関のこれらに関する判断は厳しく、最近6ヶ月~1年以内に未払いや支払い遅れがあるだけでも、融資は難しくなってしまいます。

 

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援資金)とは?

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援資金)の概要

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)とは、日本政策金融公庫が行っている融資制度の一つで、過去に事業に失敗して廃業していても、再度、起業したいという方を支援する融資制度です。
とはいえ、廃業経験のある方を対象とした融資制度となるため、一般的な事業融資と比較すると、成功する確率は低くなります。
参考:再チャレンジ支援融資

この融資を成功させるためには、「廃業の理由か正当なもので、やむを得ないものだったこと」や、「どれだけ新しい事業について、成功確率の高い計画を有しているか?」などの、過去の経験や反省を踏まえた計画づくりができるかがポイントとなります。

また、過去に失敗したのと同じ業種で申し込む場合には、「なぜ、失敗したのか?」、「なぜ、同じことにならないといえるのか?」といった点を計画の中で、具体的かつ明確にしておできる必要があります。

なお、信用保証協会では協会による保証のついた「再挑戦支援保証制度」を実施しているので、こちらの制度も利用できないかを検討することをおすすめします。

 

「再挑戦支援資金」の申込条件は?

「再挑戦支援資金」の利用条件等については、以下のとおりとなっています。

 

<利用条件>

新たに開業する方または事業開始後おおむね「7年以内」の方で、次のすべてに該当する方

  1. 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
  2. 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
  3. 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること

<融資限度額>  7,200万円(うち運転資金4,800万円)

<資金使途>  新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金(前事業に係る債務を返済するために必要な資金を含みます)

<返済期間>  設備資金20年以内<うち据置期間2年以内>

運転資金15年以内<うち据置期間2年以内>

<利 率>   基準利率。ただし、「女性の方、35歳未満または55歳以上の方」や「中小企業の会計に関する基本要領」等を適用している、または適用する予定の方」などの一定の要件を満たす方については、特別利率が適用されます。

担保・保証   原則、必要。ただし、状況によっては、担保や保証人が不要となる制度を併用できる場合があります。

 

再挑戦支援資金の利用のポイント

① 「廃業歴等のある」こととは?

この融資では、過去に廃業歴等があることが条件となっています。この「廃業」とは、破産などの法的整理をした場合のみならず、自発的な廃業や資金繰りの失敗による事業継続の不能の場合などを含みます。

② 「廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理できる見込みがある」こと
再挑戦支援資金の申込条件の一つに「その負債が過大なものでないこと」があります。これは申込時にまったく負債がないということではなく、ある程度の負債はあるがそれが少額で、返済を続けながらでも新しい事業に影響しない程度の額であることを意味します。

具体的な金額はケースバイケースとなりますが、この要件について日本政策金融公庫にヒアリングしたところ、担当者からは次のような回答がありました。

「再挑戦支援資金を利用する時点において、ある程度の事業負債が残っているのはやむを得ないが、現在、その負債について債権者と返済に関する協議ができている、ある程度合理的な金額の返済が行われている、完済のめどが立っていることなどが必要となる。」

したがって、負債の返済額が大きくて、事業を継続しながらでは返済ができないような場合には申込みの対象外となります。

③ 「廃業の理由・事情がやむを得ないもの等である」こと

この融資を利用するためには、「廃業の理由や事情が、やむを得ないものであること」が必要となります。

たとえば、「コロナの影響や物価の高騰により販売不振となった」、「売掛先の会社の倒産により、資金回収ができなくなった」などの理由がやむを得ないものと考えられます。

しかし、「放漫経営により倒産した」、「会社の資金を個人的に流用していた」などの理由による場合には、利用することは難しいといえます。

④ 担保・保証人について
再挑戦支援資金を利用するときには、原則として、融資額に応じた担保や保証人が必要となります。創業融資のような「無担保・無保証」」ではないので注意してください。

しかし、本融資については、「新創業融資制度」や「担保を不要とする融資節度」と併用して利用することが可能です。

そのため、これらの制度の要件を満たせる方については、無担保・無保証で再挑戦支援資金を利用できる可能性があります。

  • 新創業融資制度 融資上限額3,000万円
  • 第三者保証人を不要とする融資制度 融資上限額(上限額4,800万円)

⑤ 事業を開始してから「おおよそ7年以内」について

再挑戦支援資金は、「事業の開始前」または「事業を開始してからおおよそ7年以内」と利用できる期間に制限があります。

そのため、7年を経過してしまったという場合には、この制度を利用できなくなってしまう可能性があるため注意が必要です。

⑥ 日本政策金融公庫への借入れが残っている場合には、難しくなる可能性大。

日本政策金融公庫への借入れが残っている場合や、公庫の借入れについて破産・免責を受けている場合には公庫からの借入れは難しくなる可能性が高いといえます。

なぜなら、免責を受けることにより公庫を含むすべての債務は支払い義務を免れますが、貸し出しをした当事者である公庫側にはその記録が残されているため、融資審査の際に調べれば公庫からの借入れについて免責を受けていることが判明するからです。

そのため、このような場合には、公庫からの借入れは難しくなるものと思われます。

 

その他の制度

債務整理をしている場合でも、状況によっては、以下の制度を利用して融資を受けられる可能性があります。

〇 再挑戦支援保証(信用保証協会)

利用条件   過去の事業で失敗した経験を生かして事業に再チャレンジする環境の整備を図る創業者で、以下の要件に該当する方

  1. 事業を営んでいない個人で、1か月以内に新たに事業を開始する方
  2. 事業を営んでいない個人で、2か月以内に新たに会社を設立する方
  3. 事業を営んでいない個人で、事業を開始して5年未満の方 他

保証限度額          3,500万円(創業関連保証及びスタートアップ創出促進保証との合算)

保証期間              10年以内(据置期間1年以内)

利 率     金融機関所定利率

資金使途              運転・設備ともに可

連帯保証人          原則法人代表者のみ

担 保                不要

 

まとめ

過去に廃業歴のある方でも、日本政策金融公庫の再挑戦支援資金や信用保証協会の再挑戦支援保証の制度を使えば再度、事業資金の融資や保証を受けられる可能性があります。

しかし、再挑戦支援資金を利用するには、廃業から7年以内であることや、現在の負債が少額であること、近い将来に完済できる見込みがあることなどが条件となるため、まずはこれらをクリアーできるかどうかを確認する必要があります。

また、再挑戦支援保証は各自治体が行う制度であるため、自治体によっては取り扱いがない場合もあることに注意してください。

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