会社を設立する際に重要となるもののひとつに「資本金」の存在があります。
資本金は、はじめの事業の元手であり、その額は対外的な信用力や資金的な基盤を表す重要な役割を果たします。
しかし、中にはこの資本金を不正な方法により大きく見せかけることにより、取引や融資を有利にしようというケースがあります。このようなものを「見せ金」といいます。
ここでは、資本金の見せ金の手口、見せ金がばれる理由や、その見抜き方についてご紹介します。
会社設立時の資本金の作り方
まず、会社を設立する時には、次のような手順で資本金を作ります。
代表者等の個人通帳から出資
会社の代表者または発起人から出資金を募り、最終的に集まった額を代表者の通帳に移します。
決定した資本額で法務局へ登記申請
集まった資金の入った代表者の通帳のコピーを設立登記申請書に添付して、法務局に提出します。
会社名義の通帳を作成して振り込む
登記完了後に会社の口座を作り、代表者の通帳からこの会社の通帳に資金を移動することにより正式な資本金とします。
「見せ金」とは?
見せ金とは、会社の資本金を不正な方法で一時的に大きく見せかけることをいいます。
主な見せ金の方法には、次の2つがあります。
① 他からの資金を利用して、金額を増やす方法
これは、一時的に他から借りた資金を資本金とすることにより、その額を大きく見せる方法です。本来、資本金はその後の会社の営業資金として使用するべきものです。
そのため、取り崩しをする場合には減資などの正式な手続きが必要となります。
しかし、この場合には、会社設立後に見せ金をすぐに引き上げてしまうため、実質的な資本金はその分少なくなります。
② 資本金の大きな会社を買いとる方法
これは、すでにある資本金の大きな会社を買い取ることにより、資本金を大きく見せかける方法です。
しかし、会社売買に利用される会社は休眠会社であることがほとんどであり、その中には実質的な資本金は存在しません。
この方法による場合には、そのままでは元の会社の履歴が残ってしまうため、会社の売買をするのと同時に、商号・本店・目的・役員などをすべて変更するのが特徴です。
なぜ、見せ金をするのか?
① 融資を受けるため
日本政策金融公庫の新創業融資制度などのように、公的融資の中には一定の自己資金を必要とするものがあります。また、資本金が大きければそれに比例して、大きな融資を借りやすいという傾向があります。
そのため、はじめの資金が少ない人は、一時的に他から借りてきた資金を自分のものとして融資を受けるために利用するケースがあります。
しかし、融資の審査の際には、資本金の元となった通帳の提出も同時に求められるため、その経歴を見ればそれが見せ金であることがすぐにばれてしまいます。
② 取引を有利にしたり、信用力を大きく見せるため
資本金の見せ金は、取引相手に自分の資本金を大きく見せることにより、取引を有利にしたり、信用力を大きくする目的でも行われます。
会社の登記簿謄本は、その取得の仕方により、現在の事項だけを記載させることもできるため、うっかりするとその資本金を鵜呑みにしてしまう危険性があります。
③ 許認可取得のため
ある種の許認可を取得する場合には、一定額以上の資本金が要件となっていることがあり、この要件を満たすために資本金の見せ金が行われることがあります。
資本金の見せ金の見抜き方
上記②の方法による見せ金については、比較的簡単にこれを見抜くことができます。
なぜなら、この場合には以前の経歴を隠すために、大幅な登記事項の変更を行っているのが普通だからです。
そのため、過去の登記簿謄本を取得すればそのような形跡を確認することができます。
見抜き方のポイントとしては、「変更年月日」や「会社の移転日」を確認することです。
会社の商号を変更したり、本店を移転した場合には、現在の登記簿謄本(現在事項証明)であっても、「〇年〇月〇日 商号変更」や「〇年〇月〇日に〇〇〇より本店移転」という日付が記載されます。
したがって、このような記載がある場合には、過去の変更履歴が記載された謄本(履歴事項証明)を取得し、同じ日に商号や本店、役員といった項目が同時に変更されている場合には、ほぼ確実に売買された会社であるということがわかります。
一方、上記の➀の方法による資本金については、これを見抜くことが困難です。
なぜなら、一時的な資本金とはいえ、正当な手続きで設立手続きがされているため、登記簿の表面的な部分からそれことを見抜くことが難しいからです。
融資の審査の場合のようにその出所となった代表者の通帳を見れば判明しますが、通常の取引ではそこまで求めることは難しいため、注意する必要があります。
なお、③による場合については、上記のどちらの方法を使っているかによります。
資本金の見せ金の危険性について
会社法違反となる
資本金について見せ金を行った場合には、会社52の2仮装出資履行義務違反として発起人は見せ金部分の資本金の出資をする責任を負います。
公正証書原本等不実記載罪となる
資本金を仮装してその金額で登記をする行為は、公正証書原本等不実記載罪となり、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
融資が受けられなくなる
見せ金を使って融資の申込みをし、それがばれたときには、その情報が金融機関に記録として残るため、その後しばらくの間は融資を受けることができなくなります。
また、このとき代表者等に関する情報も同時に残るため、後日、別会社を新たに設立した場合でも、やはり融資は難しくなります。
まとめ
会社の資本金を見せ金で大きく見せる行為は犯罪です。
見せ金には、それ以外にも金融機関の信用を失って融資が受けられなくなるなどのデメリットがあるため、絶対にしないようにしましょう。
しかし、見せ金に関する正しい知識を身につけておけば、不正な取引などを見抜くことができるため、安全に取引をすることができるようになります。
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