代表税理士
北村 嘉章
所属 |
四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832 北村嘉章税理士事務所 代表税理士 合同会社 N village consulting 代表社員 穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事 |
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家族 | 妻と長女と長男の4人家族 |
職歴 |
日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部 大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録 税理士業界での経験年数は10年 |
皆さんは融資の「据置期間」というものをご存知でしょうか?この据置期間とは、融資を利用する際に、一定の間、元本の返済の開始を遅らせることのできる制度です。
これを利用することで、1回あたりの返済額を少なくすることができるため、上手に利用すれば資金繰りをラクにすることができます。
しかし、一方で据置期間にはデメリットもあるため、計画的に利用する必要があります。
この記事では、据置期間の意味や使いかた、利用する際の注意点について解説いたします。
Contents
「据置期間」とは、融資を利用した際に「元本の返済が猶予される期間」です。
据置期間中は、本来返済すべき元金の支払いが猶予され、利息だけを払えばよいため、上手に利用すれば「返済が厳しい」というような場合に役立ちます。
一般的に、金融機関から融資を受けた場合には、その翌月から元本と利息の支払いが始まります。
しかし、創業時や新たな事業を開始したばかりの頃は、十分なキャッシュがないため、とくに元本の支払いが大きな負担となります。
そのため、日本政策金融公庫などの一部の金融機関では、据置期間を設けることで、借入人の返済負担の軽減を図っています。
なお、据置期間を設けるかどうかは、融資の申込人の任意となるため、必ず利用しなければならないものではありません。
また、申込時にその存在に気づかなかった場合や、その申込を忘れた場合などは、据置が適用されないことがあります。
据置が適用されるのは、元金についてだけであり、利息の支払いには適用されないため、据置期間中でも利息は約定通り支払う必要があります。
ここでは、据置期間を利用するときのポイントや注意点について解説します。
据置期間を利用した場合、その期間は返済期間に含まれます。
据置期間を利用した場合でも、返済期間そのものが長くなるわけではありません。
たとえば、返済期間5年、据置期間6ヶ月の約束で融資を受けた場合、返済期間は5年のままとなります。
この場合は、はじめの6ヶ月については元金の支払いが据え置かれ、7ヶ月目から支払いが始まります。
このように据置期間は全体の内数であり、これを利用した場合でも、その分返済期間が延びるわけではないことに注意する必要があります。
据置期間を利用した場合には、最終的に支払う利息の総額が大きくなります。
例
600万円を60回、利率2.5%、元金均等方式で計算した場合
・通常時の利息支払い総額 381,218円
・据置期間6ヶ月利用した場合の利息総支払額 418,724 円
これは据置期間を利用したことで、支払いをしていない期間について元金にかかる利息の支払い額が増えるためです。
以上の通り、据置期間を利用した場合には、その期間の長さに応じて、最終的な利息の支払額が増えることとなります。
据置期間にはメリットがある一方、デメリットも存在します。
長期間の据置期間を利用してしまうと、支払総額が増える分、結果的に支払いがより困難となってしまうため、メリットとデメリットの両方をよく考えて計画的に活用する必要があります。
据置期間の利用には、次のようなメリットがあります。
据置期間を設定することにより、支払いに余裕をもたせることができます。とくに、創業当初の数か月間は売り上げが立ちにくいため思ったほど収入が得られないことも多く、このような場合は、返済が厳しくなります。
また、通常、融資の返済は借入れをした月の翌月から始まるため、計画通りに売り上げが上がらないときは、借入れをした資金から返済しなければならず、その場合には、せっかく融資を受けた資金も徐々に目減りすることとなります。
本来、融資の資金は返済の財源としないことが理想的ですが、それが難しい場合にはあらかじめ据置期間を利用することで、余裕をもった返済や資金繰りがしやすくなります。
事業開始後に、最も経営者の負担となりやすいのが、「返済をしなければならない」というプレッシャーです。
ただでさえ、開業時には支払わなければならない支出が多く、また、売り上げも見込んでいた通りにならないということが起こりがちです。
そのため、資金繰りがうまくいかない場合、経営者の精神的な負担は大きなものとなります。
もし、金融機関への返済を遅らせてしまうと、次回の融資審査にも悪影響となるだけでなく、企業そのものの信用や評価を落とす事にもつながるため、その支払いには神経質にならざるを得ません。
しかし、据置期間を設けることで、月末や年末の支払い時期に資金不足となる可能性が低くなるとともに、支払いをしなければならないという精神的プレッシャーを軽減することができます。
据置期間を利用した場合のデメリットとしては、次のようなものがあります。
据置期間を利用した場合、据置期間が長いほどその後に支払う1回あたりの元金の額が大きくなります。
例えば500万円を5年(60回)で返済するケースの場合、毎月の元金の支払額は以下のとおりとなります。
据置期間 元金総支払額 元金支払額/回
据置なし 5,000,000円 83,333円
据置3ヶ月 5,000,000円 87,719円
据置6ヶ月 5,000,000円 92,592円
このように、据置期間を利用しても元金自体の総支払額には影響はありませんが、据置期間が長いほど1回あたりに支払う元金額は大きくなります。
据置期間は申し込んだから、必ず希望通りになるというわけではありません。
具体的な据置期間は、事業計画書の内容の信ぴょう性や申込人の能力、資力などを総合的に考慮して、審査により決定されます。
そのため、申込時に6ヶ月の据置期間を希望していても、さらに短い期間に短縮されたり、ケースによっては据置そのものが認められないこともあります。
したがって、融資の申込みにおいては据置期間を当てにすることなく、まずは、据置のない計画で返済が可能となる計画を作るようにしましょう。
なお、据置期間は融資の返済開始後には変更することができません。したがって、申し込みの際には、自分にあった期間はどのくらいなのかや、返済力などをよく考えて決めるようにしましょう。
融資では、据置期間と返済期間との間には、次のような関係があります。
返済期間 元本返済額 利息支払総額
短い 大きい 少ない
長い 少ない 大きい
したがって、据置期間を決めるときには、上記の関係を理解して決定する必要があります。
なお、据置期間と並んで「いくらの返済をしなければならないか?」ということも、資金繰りをする上では重要なポイントとなります。適切な返済期間を決めるには、今後、どの程度の利益を上げられるかを予測する必要がありますが、返済の原資を考えるときは「減価償却額」についても考えなければなりません。なぜなら、減価償却額は会計上の計算では費用とされますが、実質的には現金が出ていかないため、利益と同じと考えられるからです。
通常、金融機関では、次の計算式を使って、企業が返済できる利益から妥当な返済期間を算定しています。
返済期間 = 融資額 / (経常利益+減価償却費)
たとえば、融資額が600万円の場合、予想される経常利益が100万円/年、減価償却費が20万円/年の場合は、600万円÷120万円=5となるため5年が妥当と判断します。
このように、適切な返済期間を何年にすればよいかは、どのくらいの利益を生み出せるかということから計算することができますが、まだ事業実績のない創業者については、事業計画書で予測する利益を使って算定することとなります。
なお、
したがって、上記の式を使えば適切な返済期間の目安を求められますが、一般的に金融機関では、長すぎる返済期間を嫌う傾向にあるため、5~7年を目安に決めるとよいでしょう。
据置期間は、すべての融資に一律ではなく、融資制度ごとに決められています。そのため、利用する融資の種類によってその長さが異なります。とくに、新創業融資制度は、単独の融資制度ではないため、新創業融資制度自体には据置期間を設定できないことにも注意が必要です。
日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業者が利用できる最大3,000万円、無担保無保証の融資制度です。
しかし、この制度はこれのみで利用できるものではなく、他のベースとなる融資制度(例えば、新規開業資金など)とあわせて利用する必要があります。
このように他の制度とあわせて利用することで、本来、無担保無保証ではない融資(ここでは新規開業資金)を無担保無保証で利用できるようにするための制度(いわば、無担保無保証の枠を設定するための制度)となります。
たとえば、新規開業資金に新創業融資制度をあわせて利用した場合、その据置期間はベースとなる新規開業資金の期間である2年(運転・設備資金ともに)となりますが、ベースとなる融資制度が一般貸付の場合は、運転資金1年・設備資金2年となります。
新創業融資制度が利用できる、主な融資の種類と返済期間および据置期間は、次のとおりです。
運転資金 5年以内(特に必要な場合7年以内)<うち据置期間1年以内>
設備資金 10年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 15年以内 <うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
日本政策金融公庫では、原則として、融資後の据置期間の短縮や伸長を認めていないため、後日になってこれを変更したいと思っても行うことができません。
しかし、以下の方法を使えば、元金の据え置きをしたのと同じような効果が得られます。
「一括返済」とは、当初に決められた返済計画によらずに、その時点の残高を一括して返済する手続きをいいます。
「繰上償還」とも呼ばれます。一括返済は、当初予定していた約定と異なる返済となることや、手続きが増えるなどの理由から、多くの金融機関ではあまりこれを歓迎していませんが、相談をすれば、たいていのケースでこれを認めてもらえます。
なお、日本政策金融公庫には、国民生活事業と中小企業事業という2つの窓口があり、通常の中小企業は前者が、ある程度規模の大きな中小企業については後者が対応することとなっています。
どちらも一括返済をすることは可能ですが、中小企業事業の融資を一括返済をする場合には弁済手数料が発生するので注意してください。(国民生活事業の融資については対象外)
「複数の融資を一本化して返済期間を延ばす」ということができる場合があります。
複数の融資の一本化とは、既存の複数の借入れを新規の融資に一本化し、返済期間を延ばす方法です。これにより、返済の口数が減るため支払いが簡単になるとともに、1回あたりの返済額を少なくすることができます。
一見するとリスケジュールにも似ていますが、リスケジュールが本来の約定に反した手続きであるのに対して、この方法は、通常の手続きで行われるものとなるため、リスケジュールのようなペナルティがありません。
たとえば、
A借入れ:残債額600万円、残存返済期間5年、毎月の返済額10万円
B借入れ:残債額840万円、残存返済期間7年、毎月の返済額10万円
という借り入れがあったとします。
この場合、この2本の借入れを
C借入れ:残債額1,440万円、残存返済期間8年、毎月の返済額15万円
へと一つにするのが複数融資の一本化の例となります。
このように複数の借入れを一本化し、返済期間を延ばすことで一回当たりの返済額を抑えることが可能です。
ただし、融資の種類によっては一本化をすることができないケースもあるため、詳しくは金融機関にご相談ください。
据置期間は、融資を利用したときに返済額の元本部分の支払いを繰延する制度です。
この期間中は返済負担が少なくなるため、創業時や新事業の開始時等の資金繰りが厳しいときに利用すると、余裕を持った経営がしやすくなります。
しかし、据置期間を利用しても返済期間がその分長くなるわけではないため、据置期間終了後の元金の支払額が増えるだけでなく、利息の総支払額も増加することとなります。
このように据置期間の利用にはメリットがある半面、デメリットもあるということを理解して利用する必要があります。
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「金融機関とのやりとりってどうすればいい?」
「書類がいっぱいあって正確に書けるかな。
記入漏れがないか心配だな」
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