代表税理士
北村 嘉章
所属 |
四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832 北村嘉章税理士事務所 代表税理士 合同会社 N village consulting 代表社員 穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事 |
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家族 | 妻と長女と長男の4人家族 |
職歴 |
日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部 大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録 税理士業界での経験年数は10年 |
創業者や中小企業が利用できる融資といえば、まず、日本政策金融公庫の融資が思い浮かびますが、これらの方が利用できる融資には「制度融資」もあります。
制度融資は、自治体と信用保証協会、金融機関の3者が協調して行う融資のため、低金利、長期借入れが可能であり、中には新創業融資制度よりも利用額が大きいものや、利息の補助等が受けられるものもあります。
この記事では、制度融資の概要、種類、日本政策金融公庫との違い、利用のポイントについて解説いたします。
Contents
「制度融資」は、信用力が少なく、通常の金融機関の融資を利用しにくい創業者や中小企業者向けに、自治体や信用保証協会が中心となって有利な条件で融資や保証をする仕組みです。
融資と保証が一体化しているため、簡単な手続きで利用できます。
「制度融資」とは、都道府県や市町村などの自治体と、信用の提供をする信用保証協会、金融機関の3者が一体となって中小企業や創業者向けに行っている、いわばパッケージ型融資といえます。
それぞれの機関の役割は、以下のとおりとなります。
対象機関 | 制度融資での役割 |
行政(都道府県等) | 制度融資の設計と運用 |
金融機関 | 自分の資金で融資をする |
信用保証協会 | 融資について公的な保証をする |
制度融資は、郵便局を除くほぼすべての金融機関で利用できるため、自分の気に入った金融機関を窓口として使うことができます。
なお、通常の金融機関の融資は相対取引となるため、信用力の低い人や財務内容の悪い企業は利用が難しくなります。
しかし、制度融資では、利用条件や融資上限額、金利、保証料などがあらかじめ決まられているため、基本的な要件を満たすことができれば、創業者や小規模の中小企業者でも利用することができます。
制度融資には、次のような特徴があります。
<制度融資のメリット>
<制度融資のデメリット>
以上、制度融資には通常の融資にはない特徴があるため、この仕組みを理解して申し込む必要があります。
なお、制度融資は必ず利用できるとは限りません。
めったあることではありませんが、金融機関によっては創業者からの申込みを断るケースもあります。
その主な理由としては、「その金融機関が創業融資の取り扱いに消極的である」などが考えられますが、このような場合でも信用保証協会から保証承諾(信用保証協会が一定額について保証をすることを承諾した書面)をもらえば、これを他の金融機関に提出することで融資を受けることがてきます。
信用保証協会では、制度融資の他に「保証業務」というものを行っています。
保証業務とは、申込みのあった企業の財務力や信用力を審査し、その企業の実力に応じて融資の保証をするものであり、保証をうけた企業は、その後に金融機関でその保証額に見合った融資の申込みを行います。
このケースでは、
という2段階の手続きをするため面倒そうに見えますが、実際の手続きでは、金融機関に書類を提出するだけなので、通常の融資と同じ手間で利用できます。
なお、信用保証協会が行うのはあくまで信用の保証であり、信用保証協会の保証が受けられたからといって、必ず融資が出るわけではないことに注意が必要です。
<制度融資の流れ>
金融機関への申込み→金融機関による審査→金融機関から信用保証協会へ審査の依頼→信用保証協会による審査→金融機関による融資の実行
<信用保証の流れ>
信用保証協会への申込み→信用保証協会による審査→金融機関へ融資申込(協会の保証承諾を持参)→金融機関による審査→金融機関による融資の実行
日本政策金融公庫は、政府が出資している公的金融機関です。主に、創業者や中小企業などの信用力の低い企業をターゲットにして融資を行っていますが、保証の提供などは行わず、融資のみを行っています。
日本政策金融公庫から融資を受けた場合、その後の取引の内容は融資の返済だけとなります。
これに対し、制度融資の場合には、融資後もその金融機関と預金、振込、引き落しなどの取引をすることができます。
そのため融資先の金融機関でさまざまな取引をしたいという場合には、制度融資を利用した方がよいといえます。
ここでは、なぜ制度融資の利用をすすめるのかについて解説いたします。
以上のように制度融資には多くの特徴がありますが、その中でもとくに制度融資の利用をすすめる理由として「制度融資の利用を通じて、金融機関の信用を得られる」ということがあげられます。
創業期はともかくも、事業を開始して一定の期間をすぎると、一般の金融機関との取引が頻繁となります。
なぜなら、創業後に事業を継続していくには、入金だけでなく、代金の支払いや引き落し、資金の振り込みといった手続きが欠かせないからです。
けれど、日本政策金融公庫では「入金→返済金の引き落し」という処理しかできないため、それ以外の取引をするには一般の金融機関を利用しなければなりません。
さらに大きな額の融資を利用するためには、特定の金融機関と継続的に取引をし、その金融機関からの信用を得る必要があります。
なお、制度融資を利用した場合には、金融機関だけでなく信用保証協会の信用を得ることができるようになります。
信用保証協会は、日本国中に全国信用保証協会という下部組織を持っています。A町やA県で積み重ねた実績は、その後のB町やB県でも引き継がれるため、その信用力は全国共通で評価されることとなります。
制度融資の利用をおすすめするもう一つの理由として「与信枠の拡大」があります。
与信枠とは、一つの企業に対して、それぞれの金融機関が設定する「融資することができる金額の限度」を意味します。
この与信枠は融資制度の融資上限額とは異なり、企業の返済実績、経営状態などにもとづき個別に決められます。
与信枠が少ないと、制度上の融資上限額が1億となっている場合でも2,000万円しか借りられないことがあります。
なお、与信枠の設定は、融資をする金融機関が独自に行っています。
そのため、もし、日本政策金融公庫だけを利用していたのでは、公庫の与信枠はすぐに限度となってしまう可能性があります。
しかし、制度融資における与信枠は公庫とは別物であるため、公庫の与信枠が限度となっても、別途、これを利用することができます。
したがって、公庫と制度融資の両方を利用することで、一行だけでは難しい額の資金調達をすることができる可能性があります。
以下では、創業者や中小企業が利用しやすい代表的な制度融資をご紹介します。
創業 ※東京都制度融資の例
利用できる方:次のいずれかに該当すること。
- 事業を営んでいない個人で、東京都内で創業しようとする具体的計画を有する方
- 創業した日から5年未満である中小企業者又は組合
融資限度額:3,500万円以内
返済期間:設備資金10年以内 運転資金7年以内(据置期間は1年以内)
利率:1.7%~2.2%%以内 又は変動利率(令和5年8月時点)
担保・保証人:原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)
小口フリーランス(全国共通)
利用できる方:この融資を含め、全国の信用保証協会の保証付融資の合計残高が2,000万円以下の小規模企業者
融資限度額:2,000万円以内
返済期間:運転資金7年以内 設備資金10年以内(いずれも、据置期間は1年以内)
利率:1.9%~2.5%%以内 又は変動利率(令和5年8月時点)
担保・保証人:原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)
クイックつなぎ(事業一般)
利用できる方:東京都中小企業制度融資等を利用していて、原則、1年以上にわたり約定どおり返済している小規模企業者(【国の全国統一保証制度】が対象。
保証限度額:500万円
保証期間:2年以内(運転資金)
据置期間:なし
金利:金融機関所定利率(令和5年8月時点)
担保・保証人:原則、不要(但し、代表者については、連帯保証が必要)
制度融資は、創業者・中小企業でも有利な条件で気軽に利用できる融資ですが、利用時には以下の点に注意する必要があります。
制度融資においては、融資申込先となる金融機関と信用保証協会の両方で審査が行われるため、金融機関だけでなく、信用保証協会にも配慮した申込みや手続きを行う必要があります。
通常、融資というと窓口の金融機関の顔色ばかりを気にしてしまいがちですが、重要なのは「どんなに金融機関が好意的でも、信用保証協会の了解が得られないと融資はうけられない」ということです。
そのため、制度融資の申込みにおいては、金融機関に対するのと同じように、信用保証協会にも配慮するということが重要となります。
具体的には、信用保証協会から要請のあった資料の提出や、事業計画書の修正もしくは補足の説明、その他の指示・質問については内容にできるだけ速やかに対応するなどが求められます。
制度融資には多くの種類がありますが、はじめて制度融資を利用する方におすすめなのが「創業融資」と「小口」です。
通常の融資は責任共有制度の対象となっているため、金融機関側では万が一の倒産リスクを考えて融資に消極的になることがあります。し寿司、この両制度は、責任共有制度の対象となっていないため、倒産等の場合でも金融機関が100%の補填を信用保証協会から受けることができます。
「責任共有制度」とは
通常の制度融資においては、融資先企業が倒産や返済不能となったときには、信用保証協会が80%、融資をした金融機関が20%の割合でリスクを負担します。しかし、責任共有制度の対象となっていない融資については、企業が返済不能となった場合でも、融資をした金融機関は100%の保証をうけることができます。
このようにこれらの融資制度は金融機関にとってリスクが少ないため、金融機関としても融資をしやすくなり、申し込みの引き受けにも積極的になりやすくなります。
前述したように、日本政策金融公庫の融資と制度融資は、それぞれ審査する機関が異なるだけでなく、一方の融資判断が他方に影響するということがありません。そのため、これら両方を利用すれば、一行だけでは借入れが難しい融資額でも、これを調達することが可能となります。
たとえば、1,000万円の創業資金が必要な場合に、日本政策金融公庫からは600万円の融資しか得られなかったとします。こんな時、通常であれば不足の400万円を自分で用意しなければなりませんが、 制度融資をあわせて利用することでこの不足分、もしくはそれ以上の融資を得られる可能性があります。
ただし、この方法による場合に一つ注意しなければならないのが、「融資の申し込みは同時に行う」ということです。一方の融資が先に出た後では、他方の金融機関から希望額の融資を受けるのが難しくなるからです。そのため、実際にこの方法を使うときは、融資の専門家に相談してから行うことをおすすめします。
信用保証協会では、すべての方に保証をするわけではなく、以下に該当する事業については保証を行いません。
信用保証協会の保証を利用するには、業種別に定められた一定の「資本金」または「従業員数」の上限を超えないことが必要となります。
信用保証協会の保証は、一部の業種の事業については利用することができません。
例
金融業、取立て業、風俗営業、LLP(有限責任事業組合)、学校、宗教団体、その他の非営利事業及び団体(NPO法人を除く)、農林狩猟漁業など
以下のいずれかに該当する場合は、信用保証協会の保証を受けることができません。
建設業や飲食業などのように、その事業をするために許認可等が必要となっている場合には、それらの取得ができた後でなければ融資・保証を受けることができません。
もし、許認可等の取得前に融資の申込みをした場合には、融資・保証の実行はその許可等の取得を確認できた後となります。
所得税や市区町村税、消費税などの税金や家賃・公共料金などの未納や滞納がある場合には、原則、融資・保証が受けられません。
なお、これら延滞等の有無は、面談時に通帳や公共料金の控えを確認することにより行われます。
公庫・制度融資のいずれの融資審査においても、申込人(代表者)の個人情報の履歴が確認されます。その際に信用情報機関において延滞や未払いなどの履歴がある場合には、融資や保証を受けることができなくなります。
個人の信用情報は、主に次の3つの信用情報登録機関で登録・管理されています。
KSC 全国銀行個人信用情報センター。全国銀行協会が主催
JICC 日本情報信用機構が主催
CIC 日本信用情報機構が主催
なお、この3つの会社では、CRINという情報交流システムを作り、情報についての共有化を図っているため、このうちのどれかひとつにでも事故情報が登録されている場合には、すべての機関の信用情報に影響します。
制度融資は、自治体が制度を作り、信用保証協会が公的な保証となる融資の一種であるため、信用力の少ない創業者や中小企業であっても容易に利用できます。
また、制度融資の利用を通じて金融機関や信用保証協会の信用を得れば、融資の与信枠や信用力を増やすことができます。
しかし、制度の内容が自治体ごとに異なるため、所在地によっては利用条件がきびしい、融資額が低いということもあることに注意が必要です。
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