日本政策金融公庫

融資を成功させる日本政策金融公庫の創業計画書の作成手続きや重要なポイントを解説!

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

これから事業を始める方の中には、日本政策金融公庫の融資の申込みをお考えの方も多いと思います。公庫の融資については、よく「簡単だ!」、「すぐに出る」などと考えている方もいますが、実際には6割以上の方が申込みに失敗しているともいわれています。

その原因にはいくつかのものがありますが、最も多いのが「創業計画書がうまく作れなかった」というものです。

この記事では、はじめて創業融資の申込みをする方でも、失敗のない創業計画書の作成手続きやそのポイントについて解説いたします。

 

日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業後一定の期間内の方のみを対象とした創業者に特化した融資制度です。

他の融資制度にはない特徴や要件があるため、事前に内容を理解しておく必要があります。

新創業融資制度とはどういう制度か?

「新創業融資制度」とは、一定の融資について、その借入れを無担保無保証で利用できるようにするための制度であり、わかりやすく言えば、無担保無保証枠を設定するための制度といえます。

 

日本政策金融公庫には、「新規開業資金」や「中小企業経営力強化資金」 などの創業者が利用できる融資制度がいくつかありますが、いずれも利用にあたっては、担保や保証人が必要となるのが原則です。

けれど、創業者には担保や保証人を準備できる方がほぼいないため、借入れを無担保無保証するために設けられたのが新創業融資制度となります。

 

したがって、この新創業融資制度とは、それ単体で独立した融資制度ではなく、必ずベースとなる融資(新規開業資金等)とあわせて利用する必要があります。

 

新創業融資制度の概要

新創業融資制度の概要は、以下のとおりとなります。

 

① 利用できる方

次のすべての要件に該当する方

  • 新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていないこと
  • 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること(自己資金の要件)

ただし、後述するように、一定の要件を満たす方は、自己資金がなくても申し込みをすることができます。

② 資金の使い道

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

③ 融資限度額

3,000万円(うち運転資金については1,500万円が限度)

④ 返済期間

各融資制度で定める返済期間以内

⑤ 利 率(年)

2.23%~3.20%(令和5年4月現在)

⑥ 担保・保証人

原則不要
法人については、代表者個人には責任が及ばない(法人代表者による連帯保証不要)となります。

 

新創業融資制度と新規開業資金の違い

前述のように、新規開業資金が単独の融資制度であるのに対して、新創業融資制度はあくまでも創業者融資を無担保無保証で利用するための枠となります。

 

また、新規開業資金は、「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」が利用できますが、一方、新創業融資制度は「事業開始後税務申告を2期過ぎるまで」の方が利用できるものとなります。

そのため、開業後2期を超えてしまったときには、新規開業資金の利用はできますが、新創業融資制度は利用できなくなってしまうことに注意が必要です。

 

融資限度額については、新規開業資金が最大7,200万円であるのに対し、新創業融資制度では3,000万円となります。

ただし、仮に5,000万円の申込みをする場合には、3,000万円については新創業融資制度を使い、残りの2,000万円について担保付きで申し込むということはできません。

このような場合には、すべてについて新創業融資制度は使えなくなることから、5,000万円全部について担保付で融資を申し込む必要があります。

 

新創業融資制度は自己資金なしで借りられる?

新創業融資制度では、「事業開始後税務申告を1期終えていない方」は、創業時において創業資金総額の「10分の1以上の自己資金」が必要となります。

ただし、一定の要件を満たす場合には、自己資金不要で申込むことが可能となります。

また、新創業融資制度を利用するには、その前提として何が自己資金となり、何がならないかについても理解しておく必要があります。

 

一定の条件の下、自己資金が必要となる

自己資金として認められるものは以下の通りとなりますが、自己資金と認められないものもあります。

<自己資金として認められるもの>
  • これまでの貯めた経緯が通帳などでわかる
  • 預貯金出資された資金
  • 国債や株券などの有価証券
  • 退職金や相続により得た相続財産
  • 現物出資した財産(車両やパソコンなど)
  • 親や兄弟、妻などから贈与されたお金
  • 開業前に事業のために支出した資金
<自己資金として認められないもの>
  • 出どころの説明できないお金
  • 現金を貯めた資金(タンス預金)
  • 親や他人から借りたお金
  • 他からの融資してもらった資金

なお、親等から贈与された資金は自己資金となりますが、これらの方から借りた資金は返済義務があるものとなるため、自己資金にはなりません。

 

自己資金が不要で新創業融資制度に申込みができるケース

次のいずれかに該当する場合には、自己資金がなくとも例外的に、新創業融資制度に申込むことができます。

※ ただし、申し込みができるだけで、融資が出るかどうかは別となります。

① 勤務先の企業と同じ業種の事業で開業するケース

現在、勤務している企業と同じ業種の事業を始める方で、現在の企業に継続して6年以上勤務している方が対象となります。

② 大学等で修得した技能にもとづいて開業するケース

大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上勤務している方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方が対象となります。

③ 認定特定創業支援等事業を受けて開業するケース

認定特定創業支援制度とは、市区町村など自治体が民間の創業支援機関等と連携して研修等を実施し、それを国が認定するものです。

この制度を利用して創業者が認定を受けることで、新創業融資制度における自己資金が不要となる他、会社設立時の登録免許税が軽減されるなどの優遇を得られます。

④ 協調融資を受けて事業を始めるケース

協調融資とは、一つの融資について、日本政策金融公庫と他の金融機関(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫または信用組合)が共同して融資する仕組みです。

したがって、この場合は一つの事業計画書を両方の金融機関へ提出することになります。

⑤ 技術・ノウハウ等に新規性が見られるケース

事業プランについて技術・ノウハウ等に新規性が見られる方は、自己資金なしで申し込みができます。

ただし、この場合には、公庫が定める一定の要件を満たす必要があります。

⑥ 新商品等の研究・開発のため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

新商品の開発や研究には一定の時間が必要となるため、6か月以上の時間を要し、かつその研究等により3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方については、自己資金が不要となります。

⑦ 「中小企業の会計に関する基本要領」を適用予定のケース

「中小企業の会計に関する基本要領」とは、小規模事業の経理を前提として作成された会計基準の一つで、通常の会計基準よりも簡易に、少ない手間で会計記帳ができます。

この会計基準に準拠して会計処理をしている企業は自己資金がなくとも申し込みができますが、基準の適用がされているかどうかについて、後日、公庫から確認されることがあります。

 

新創業融資制度の利用時のポイント

無担保・無保証人とは?

新創業融資制度は、無担保・無保証で利用できる融資制度であり、法人が利用する場合には、代表者が連帯保証人となる必要がありません。

通常の「無担保・無保証」融資は、代表者以外の第三者の保証人が不要ということを意味します。

そのため、通常の無担保無保証制度である制度融資の場合には、法人の代表者が連帯保証人となる必要があります。

 

これに対して、公庫の新創業融資制度では、法人の代表者が連帯保証人となる必要のない、いわば「完全な無担保無保証融資」となります。(申込人は法人)

しかし、個人事業の場合には、借入人=個人事業主となるため、弁済責任を免れることはできません。

そのため、 今後の経営におけるリスクを減らしたいと考えるのであれば、法人で申込んだ方が有利となります。

 

許認可との関係

新創業融資制度を申し込む場合には、原則、必要な許認可が取得できていることが必要となります

。仮に融資の申込期間中に許認可の審査が完了していない場合には、その許認可が取得できるまで融資の振り込みは行われません。

 

ただし、飲食店で必要なる営業許可については例外で、許可の申請ができていれば、その取得ができていない場合でも融資が実行される取り扱いとなっています。(日本政策金融公庫の場合)

 

新創業融資制度の手続きの流れ

新創業融資制度を利用して融資を申込む場合の流れは、以下のとおりとなります。

 

① 創業計画書の作成や自己資金の確認などの申込み準備
② 日本政策金融公庫への申込み

借入申込書に創業計画書などの必要書類を沿えて、営業予定地を管轄する日本政策金融公庫の支店へ融資を申込みます。申込みは郵送やインターネットでも行うことができます。

③ 日本政策金融公庫の担当者との面談

融資の申込み後1週間から約10日以内に、日本政策金融公庫の担当者との面談が行われます。

面談は公庫の支店で行われる場合と、申込人の事務所で行われる場合があります。

③ 融資結果の連絡

公庫担当者との面談終了後、2〜3週間以内に融資の結果についての連絡があります。

④ 日本政策金融公庫との融資契約の締結

担当との面談が終了してから、約1週間から10日以内を目安に公庫と融資に関する金銭消費貸借契約を締結します。

契約は、公庫の支店で行います。

⑤ 融資の振り込み

契約後1週間程度で指定した口座に融資の資金が入金されます。

なお、この場合の口座はどこの金融機関のものを使用しても構いません。

 

新創業融資制度の申込み・審査の必要書類

新創業融資制度の申込みには、以下の書類が必要となります。

なお、法人と個人とでは必要となる書類が一部異なります。

必要書類についてより詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

創業融資の必要書類と準備のポイントについて解説!

個人事業・法人に共通して必要となる書類や資料

  • 借入申込証
  • 創業計画書
  • 代表者の身分証明書
  • 自己資金の確認できる通帳や証書など
  • 設備を購入する場合は、その設備の見積書
  • 法人の登記簿謄本(法人の場合)
  • 許認可が必要となる事業の場合には、許認可証のコピー
  • テナントを利用する場合は賃貸契約書や物件・家賃などの概要がわかるもの

提出を求められる可能性のあるもの

  • 公共料金の支払いの控えや家賃の納付書等
  • 源泉徴収票
  • 納税証明書

 

自己資金の確認できる通帳は、コピーではなく原本を提出しますが、ネット銀行利用している場合には、入出金の履歴が記載されている箇所をダウンロードし、印刷したものを提出します。

 

なお、事務所や店舗を借りて営業する場合には、融資申し込み前に正式な賃貸契約を締結する必要はありません。

不動産屋チラシ等、住所や間取、賃貸の条件(保証金や家賃等)が記載された資料で構いません。

ただし、賃貸している自宅を事務所として利用する場合には、賃貸借契約の物件の使用の目的が「住居兼事務所」または「事務所」となっている必要があり、この部分が単なる「住居」となっている場合は事務所として認めてもらうことができません。

 

まとめ

新創業融資制度は事業経験のない創業者であっても最大3,000万円まで、無担保無保証で利用できる融資制度です。

しかし、利用するには「決算を2期終えるまでに申し込む必要がある」、「創業にかかる経費の1/10以上の自己資金が必要」などの特殊な要件があります。

また、それ以外にも創業計画書の作成が必要となったり、申し込みから融資が出るまでに1ヶ月〜1.5ヶ月の時間がかかるなどにも注意して手続きをする必要があります。

 

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