日本政策金融公庫

日本政策金融公庫で融資が決まった後の手続きや注意点を解説!

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

日本政策金融公庫から融資が決まった方の中には「 もう、これで手続きは完了」とお考えの方も多いと思いますが、 融資の手続きはこれで終わりではありません。

融資が決まってからもすることや注意しなければならないことがたくさんあります。

とくに融資を受けた後の返済については、これを疎かにすると公庫からの信用を失い、その後の融資が受けられなくなったり、最悪は破産や事業を続けることができなくなる可能性もあります。

この記事では、日本政策金融公庫における融資の手続きの流れや、融資が決まった後の注意点について解説 いたします。

 

日本政策金融公庫の融資手続きの流れ

日本政策金融公庫の返済後の手続きについて解説する前に、まずは、全体的な融資の流れについて解説します。

日本政策金融公庫で融資を受ける場合の流れは、以下の通りとなりますが、創業融資と通常の融資とでは、多少、かかる時間や手続きの内容が異なります。

 

手続き

目安所用期間

融資決定前 1.公庫窓口への相談

2. 融資の申込み

3. 担当者との面談・審査

4. 融資の決定

(創業融資)

 

 

 

7~10日

 

10~14日

 

1~2週間

(通常融資)

 

 

 

 

 

 

 

1~2週間

融資決定後 5 契約手続き

6. 返済の開始

7. 返済の完了

 

 

翌月~

 

 

翌月~

 

1.公庫窓口への相談

公庫窓口への相談は、融資に必ず必要な手続きというわけではありません。

しかし、はじめて公庫に融資を申し込むときや、以前とは異なる理由で追加融資の申込みをするときなどは、事前に相談をして、利用できる融資の種類や要件、申込時の注意点などを確認することをおすすめします。

 

融資の相談は支店窓口だけでなく、電話やオンラインでも行うことができます。

また、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、都道府県の生活衛生営業指導センターなどでも相談することが可能です。

 

事業資金相談ダイヤル 0120-154-505  【受付時間】平日9:00~19:00

オンライン相談 予約相談【国民生活事業】|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)

※オンライン相談は、事前の予約が必要となります。

 

2. 融資の申込み

融資の申込みは、支店での申し込みの他、インターネットでも行うことができます。

インターネット申込みを利用すれば、自宅や職場から24時間365日、いつでも行うことができます。

インターネット申込み手続き https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/internet_kariire.pdf

 

【インターネット申込みの場合の必要書類】

<個人営業の方>

  • 最近2期分の申告決算書(申告されている方)

<法人営業の方>

  • 最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)
  • 最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方)
  • 設備資金の申込みの場合は見積書

<はじめて申込みをする場合>

  • 創業計画書(新たに事業を始める方または事業を開始して間もない方)
  • 企業概要書(創業者でない方)

※ 創業計画書を提出した場合は、企業概要書の提出は不要

  • 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人営業の方)
  • 運転免許証(両面)またはパスポートのコピー
  • 許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)

※郵送による申込手続きを希望の場合は、上記資料とあわせて「借入申込書(国民生活事業用)」の提出が必要となります。

 

3. 担当者との面談

融資申し込み後、7~10日で公庫担当者との面談が行われます。面談が必要となるのは以下の方となります。

  • はじめて融資を申し込む方
  • 以前の融資から期間が経過している方
  • これまでの事業と異なる事業をする方

したがって、最近に公庫で融資を受けている方については面談が不要となります。

 

面談は、通常、公庫の支店で行われますが、営業場所の確認をする必要があるときや設備の確認をする必要がある場合は、店舗や工場で行われることもあります。

通常、面談時間は40分〜1時間程度となりますが、計画や申込みの内容に問題がある場合はさらに時間をかけて行われます。

 

面談では、主に資金の使いみちや事業の状況(計画)などについて確認がされるため、当日には会社や営業の状況(計画)、資産・負債などがわかる書類を準備しておく必要があります。

とくに、創業の場合には、自己資金の有無や家賃などの支払い状況を確認するため、会社の通帳と代表者個人の通帳(自己資金のわかるもの)が必要となります。

 

4. 融資の決定

面談終了後、公庫の支店で審査が行われ、その結果が10~14日後に連絡されます。

決定の内容は、「満額承認」、「減額して承認」、「否決」のいずれかとなります。

もし、融資が承認された場合には、借用証書など、契約に必要な書類が郵送されてきます。

 

5 契約手続き

融資関連の書類に必要事項を記載し、署名捺印して、公庫支店へ郵送します。

融資契約の際に必要となる資料としては、以下のものがあります。

  • 借入れ契約書
  • 利用規約や個人情報に関する同意書
  • 口座振替届出書
  • 入金先の通帳
  • 契約書に貼付する収入印紙
  • 本人の印鑑証明書
  • その他

※団体信用生命保険に加入の場合はその申込用紙も必要

 

収入印紙の額は借り入れる金額により異なるため、事前に用意する額面を確認しておきましょう。

入金先の通帳は、法人のものでも代表者個人のものでも構いません。

なお、団体信用生命保険とは、返済期間中に本人が死亡したり障害状態なったときに支払われる生命保険の一種です。

万が一の場合には、保険金が返済に充当されるため、その後の支払いを心配する必要がなくなりますが、一定の保険料の支払いが必要となります。

 

融資申し込みの際に不動産などの担保を提供する場合には、対象の物件について根抵当権設定の手続きが必要となるため、無担保借り入れの場合より2週間程度、融資がされるのが遅くなります。

 

6. 返済の開始

融資が実行された時は、当月又は翌月から決められた額の返済が始まります。

公庫に限らず銀行からの融資の返済は「元金均等払い方式」となります。

  • 元金均等払い

一定(均等)の元金額に利息を加えた金額を支払う方式です。

返済回数が進むにつれて利息額が少なくなるため、総支払額は毎回変動します。

一回目 元金50,000円+利息5,000円=55,000円

一回目 元金50,000円+利息4,700円=54,700円 ※支払総額は毎月異なる

  • 元利均等払い

返済する元金と利息を合わせた額が均等になるように返済していく方式で、住宅ローンなどで採用されています。

毎月の返済額が常に同じになります。

元金45,000円+利息5,000円=50,000円 ※支払総額は毎月同じ額となる

 

7. 返済の完了

融資の返済が完了したときには、特別な手続きは必要ありませんが、申し込みの際に担保の提供をしていているときには、根抵当権の抹消手続きが必要となります。

抹消の手続きは、公庫から必要書類が送られてくるので、それにもとづいて自分で行います。

 

融資の決定が取り消される場合

融資が実行された後でも、申し込み手続きに問題があったり、約定に違反している場合には、融資が取り消されたり、期限の利益を失って一括返済を求められることがあります。

申込人に次のような理由が生じた場合には、融資の取り消しや返済を求められることがあります。

  • 設備資金を購入するという理由で借りた資金を運転資金に利用している場合
  • 事業資金として借りた資金を個人的な消費に利用していた場合
  • 申込書や事業計画書の内容を偽った場合
  • その企業の資産が差押えられたり、競売にかけられた場合
  • 2回以上の不渡りを出した場合

 

なお、融資の取り消し等がされときは、公庫以外の金融機関にもそれか察知されてしまうのが普通です。

なぜなら、通帳の記録を見れば、不自然な返済の履歴が残っているからです。

そのため、このような履歴が確認された場合には、他の金融機関も警戒して融資に応じなくなるため、その後の資金繰りが難しくなってしまいます。

 

返済を延滞した場合の手続きの流れ

公庫の融資の返済を延滞した場合には、以下のような対応を取られたり、ペナルティを課されることとなります。

① 担当者からの電話による支払いの督促

融資の返済が期限までにされなかった場合には、まずは公庫の担当者より電話による督促が行われます。

督促のタイミングには多少の差がありますが、通常は返済期日の2~3日後に連絡が行われます。

 

「うっかり、口座に入金するのを忘れていた」、「他の支払いのため残高が不足していた」などの場合は、その旨を伝えてすぐに入金しておけば大きな問題とはなりません。

しかし、このような場合でも1回の延滞としてカウントされるため、このようなことが短期間のうちに何度も続くと信用を失うだけでなく、対応が次の段階に進んでしまいます。

また、この時に電話に出ない、誠実な対応をしないなどの場合には、早い段階で対応が次の段階へ進むこととなります。

② 郵便による督促

「電話による連絡をしても出ない」、「すぐに入金の手続きをしない」などの場合には、郵便で督促状が送付されることとなります。

この督促状には支払期日や督促金額が記載されており、一度だけではなく、何度も送られてきます。

 

なお、返済額全額の支払いができない場合には、この時点で公庫に相談し、支払いの分割などを認めてもらえれば、これ以上の対応に進むことはありません。

③ 期限の利益の喪失

この段階まで支払いや公庫との協議などの具体的な対応を取らないときは、公庫から「期限の利益の喪失通知書」が送られてきます。

期限利益の喪失とは、返済完了時まで毎月決められた金額の支払いをするという権利が失われるもので、この通知が送られてきた以降は、融資額の残債の全額を一括で支払わなくてはならなくなります。

④ 訴訟・強制執行手続き

さらに支払いや対応を放置していると、日本政策金融公庫もしくは公庫から債権譲渡を受けた債権回収会社により法的な措置を取られることとなります。

具体的には、公庫等から裁判を提起されます。この裁判ではよほどのことがなければほぼ100%債務者が負けますが、これにより債務名義(勝訴判決)を取得した公庫等は債務者の財産に対して強制執行を行うことができるようになります。

 

強制執行の方法には不動産執行(強制競売)・動産執行・債権執行の3種類がありますが、債権執行は代表者の給与や会社の売掛金に対して行われる最もポピュラーな方法です。

なお、不動産への強制執行には手間と費用が掛かるため民間の金融機関ではこれを嫌がるところも少なくありませんが、日本政策金融公庫では躊躇なく行う傾向にあります。

ただし、しっかりとした返済意思を示す債務者に対しては、リスケジュールへの切り替えや任意売却など柔軟な対応をしてもらえることもあります。

 

返済ができない場合のデメリット・ペナルティ

公庫からの返済ができないときには、次のようなデメリットやベナルティを受けることとなります。

遅延損害金が発生する

公庫への返済を遅らせた場合には、たとえ一日でも延滞損害金が発生します。

遅延損害金の発生は返済期日の翌日から始まり、現在の金利は年8.7%と高率なものとなっています。

遅延損害金は借入残高と延滞した日数により計算されるため、残債額が大きいほど、もしくは延滞日数が多いほど高額となります。

信用情報機関に事故情報が登録される

延滞が一定期間を超えて続いた場合や期限の利益の喪失をした場合には、その情報が信用情報機関に登録されます。

現在、国内の信用情報機関としてはCIC・JICC・KSCの3つがありますが、公庫ではCICに加盟しており、他2機関とも提携をしているため、公庫で延滞等をした場合にはすべての信用情報機関にその情報が登録されることとなります。

保証人への請求がされる

融資の申込み時に保証人をつけている場合には、保証人に対しても請求が行われます。

なお、公庫の行う保証は連帯保証であるため、保証人はほぼ債務者と同じ責任を負うこととなります。

そのため、保証人に返済できるだけの資力がない場合には、保証人についても廃業や破産をしなければならなくなります。

その後の公庫からの借り入れが難しくなる

たび重なる延滞や期限の利益の喪失をした場合には、当然、追加の融資を受けることはできませんが、たとえその後に返済をし、完済ができたとしても、その後の借入れは難しくなります。

これは公庫では信用情報機関の情報とは別に、公庫内で借入人の経歴や返済履歴を保有しているためであり、この情報はずっと引き継がれることとなります。

そのため、一度、延滞等を起こした場合には、その後もしばらくの間、融資が出ない、大きな額の借入れができないということになります。

 

融資後に返済が難しくなった場合の対処法

融資後に返済が難しくなった場合には、以下のような対策をすることで、対処することが可能となります。

1. 返済計画の見直し

返済ができなくなったときは、まずは日本政策金融公庫の担当者に返済を猶予してもらえないかを相談してみましょう。

このような状況で追加融資に応じてもらうのは難しいといえますが、返済計画の見直しや後述のリスケジュールに応じてもらうことができます。

公庫側でも何の対応もせずにその企業が倒産するようなことになっては残債の回収ができなくなってしまうため、前向きに取り組んでもらえることがほとんどです。

 

しかし、その際に注意すべきなのが「早めに相談する」ということです。

公庫でも延滞回数が3回以上となった場合には、対応できる手段が限られてきます。

したがって、できれば返済ができなくなる前に相談するのが望ましいといえますが、遅くとも延滞が始まるタイミングですぐに相談するようにしましょう。

2, リスケジュールの申込み

リスケジュールとは、はじめに銀行と約定した額の返済ができない場合に、元金の支払いを減額または据置してもらうことをいいます。

例えば、元金30万円、利息2万円の支払いをしていた企業が、元金の支払額を10万円にしてもらうようなケースがこれにあたります。

これにより、その企業の状況にあった返済額に切り替えてもらえるため、資金繰りを楽にすることができます。

 

ただし、リスケジュールは元金についてのみ行うことができるものであり、利息については当初の計画通りに支払う必要があります。

リスケジュールの期間は、公庫がその企業の返済力を見て判断するため一律ではありませんが、通常は6ヶ月~1年間程度となることが多いといえます。

なお、リスケジュールは延滞ではなく、公庫と新たに取り交した契約に基づく手続きのため延滞料などのペナルティは発生しませんが、リスケジュール中の期間は当然として、その後もしばらくの間は新規の融資を受けることが難しくなることに注意する必要があります。

3, 他の金融機関による借換え

公庫の返済が難しくなったときは、公庫や他の金融機関から残債額を新規に借り入れて、その資金で返済することができる可能性があります。

とくに公庫では、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」による日本政策金融公庫の既存債務の借換えを認めているため、この制度を利用できる場合には新規借入額で現在の債務を借り換えることができます。

 

この借換えをした場合のメリットとしては、「より低い金利で借入れができる」(「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の金利は最低レベル)、「新規融資の返済期間を当初より伸ばすことで一回当たりの返済額を少なくすることができる」、「新規融資につき据置期間が利用できる」(据置期間中は、元金の返済不要)などがあります。

なお、ケースによっては、他の金融機関から新規に借り入れて公庫分を返済することも可能ですが、信用保証協会付融資や民間金融機関については、原則、「旧債振替の禁止」が規定されているため、これに該当しないように注意する必要があります。

ただし、この旧債振替にあたる場合でも、事業者が希望し、信用保証協会がこれを事業経営上プラスになるという理由で認めることがあるため、相談してみることをおすすめします。

※ 「旧債振替」とは:新規貸付をもって当該金融機関の既存債権の返済に充当すること

4. 事業再生手続き

以上の手続きをとれない、もしくは以上のことをしても返済の見込みがないような場合には、事業再生の手続きをする必要があります。

事業再生手続きには大きく分けて大きく分けて「法的再生」(裁判所が介在して債務の整理や事業の立て直しを図る方法)と、「私的整理」(裁判所を介入させず、債務者と債権者が話し合いで解決する方法)の2種類があります。

 

法的再生方法としては、民事再生、特定調停、破産、特別清算などがありますが、破産や特別清算は事業を終了させることを目的として行われるため、事業を継続するのであれば民事再生や特定調停を利用する必要があります。

また、私的整理には、私的整理ガイドラインの利用、中小企業再生支援協議会の利用、事業再生ADRの利用などがありますが、これらはいずれも事業継続をする目的で行われます。

 

いずれの方法も一長一短がありますが、現在の状況や今後の方針(事業を継続したいのか、清算したいのか)に照らし合わせて、選択することが重要となります。

 

まとめ

日本政策金融公庫からの借入れをするときは、融資決定後の手続きについても理解しておく必要があります。

もし、その後の返済や資金管理をしっかり行わないと返済の延滞が生じ、期限の利益の喪失や延滞損害金などのペナルティを負うこととなります。

とくに3回以上の延滞をした場合には、期限の利益を喪失し、差し押さえや強制執行をされる可能性があるため注意する必要があります。

なお、支払いができない場合の対応として、借換えやリスケジュールなどをする際は、専門的な知識が必要となるため、早めに公庫や税理士、融資専門家などに相談するようにしましょう。

 

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