日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の新規開業資金とは?要件や必要書類の例を解説!

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

「これから開業したい」、「不足の資金を借りたい」とお考えの方は多いと思いますが、そんな方におすすめなのが日本政策金融公庫の新規開業資金と新創業融資制度です。

この制度は、創業者の方でも比較的簡単な要件で、無担保無保証で最大3,000万円の融資を利用することができき、一部については金利が低くなるというメリットがあります。

しかし、これらには利用の上での注意点、特別な要件もあるため、よく制度の内容を理解しておかないと、融資の失敗や金額の減額につながります。

この記事では日本政策金融公庫の新規開業資金や新創業融資制度について、要件や借りられる金額、申込時の注意点やポイントについて解説いたします。

 

「新規開業資金」とは?

新規開業資金とは、開業前または開業後約7年以内の方が利用できる融資制度です。

女性や若者、シニアの方が利用する場合には、一定の金利の優遇が受けられます。

 

新規開業資金概要と申込み条件

融資制度 利用条件 その他の条件
新規開業資金(一般) 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円)基準利率
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援) 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方(注1)のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

特別利率A 一定要件を満たす場合はさらに優遇

 

新創業融資制度とは?

新創業融資制度とは、開業前または開業後2期を過ぎるまでの方が利用できる制度です。

新創業融資制度の概要と申込み条件

利用できる方 次のすべての要件に該当する方

  • 新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方
  • 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できる方

ただし、「勤務経験がある企業と同じ業種の事業を始める方」、「創業塾や創業セミナーなど一定の要件に該当する場合は、本要件を満たすものとみなされます。

資金使途 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
返済期間 各融資制度に定めるご返済期間以内
利率 2.40~3.60(基準金利) ※令和5年12月1日現在
担保・保証人 原則、不要

※原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっています。また、法人の方が希望する場合は、代表者が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。

 

融資の申込方法

融資の申込みは、郵送・支店への持参・インターネットのいずれかの方法で行うことができます。インターネットの申込みは365日、24時間、行うことができます。

<インターネット申込み>

https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/internet_kariire.pdf

事前の相談が必要な方については、電話・窓口・オンラインなどの方法で行うことができますが、窓口・オンラインでの相談には予約が必要となります。

事業資金相談ダイヤル 0120-154-505

また、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、都道府県の生活衛生営業指導センターなどでも相談対応を行っています。

 

新規開業資金と新創業融資制度の関係について

新規開業資金と新創業融資制度は、まったく別の制度ですが、両者をあわせて利用することで、無担保無保証で融資を利用することができます。

新規開業資金が単独の融資制度であるのに対して、新創業融資制度はこれらの融資を無端穂無保証で利用できるようにするための特別枠となります。そのため、新創業融資制度は他の融資制度と併用して利用する必要があります。

例えば、「新規開業資金」をそのまま使う場合は、原則として担保か保証人が必要となります。

しかし 新創業融資制度と併せて利用することで、無担保無保証の融資とすることが可能となります。

 

新規開業資金には、いくつかの種類があり、その方の状況に応じて適したものを選ぶことことができます。

融資制度 利用条件 その他の条件
新規開業資金(再挑戦支援関連) 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、次のすべてに該当する方

・廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること

・廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること

・廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

基準利率 一定要件を満たす場合はさらに優遇

新規開業資金(中小企業経営力強化関連) 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用する予定の方であって、自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

特別利率A

以上のように、新創業融資制度は他のさまざまな融資制度とあわせて使うことで、それらの融資を無担保無保証とするための特別枠を設定するための制度ということになります。

 

新創業融資制度のメリットとデメリット

新創業融資制度はメリットが多く、創業者の方が利用しやすい制度ですが、デメリットもあります。

新創業融資制度のメリット

① 無担保無保証で最大3,000万円までの借入れができる

新創業融資制度は、無担保無保障で最大3000万円までの借り入れをすることができます。(ただし、運転資金についてはそのうち1,500万円が限度)

創業融資は日本政策金融公庫以外にも 制度融資などで取り扱いがありますが、創業融資の中では最大規模の金額となります。

また 無担保無保証で利用できるため、 第三者の保証人や信用保証協会の保証などを利用することなく、手軽に申し込むことかできます。

 

② 実績不要で借入れができる

新創業融資制度は、過去の事業実績がなくとも利用することができます。

一般的なプロパー融資などでは過去の実績が重視されるため創業者は融資が借りにくい状況にありますが、 この融資制度は一定の条件を満たせばほぼ 事業計画の内容の審査だけで借り入れをすることができるため、事業の実績がなくとも利用できます。

ただし、この制度では実際に事業を行った実績は不要ですが、これから行おうとする事業に関する経験(斯業経験)は審査で重視されるのでご注意ください。

 

③ 一定の要件を満たす場合には、自己資金不要で利用できる

新創業融資制度の利用をする場合、事業開始後税務申告を1期終えていない方については、「創業にかかる経費の1/10以上の自己資金」が必要となりますが、一定の要件を満たす場合には この要件が免除となります。

具体的には、以下のいずれかの要件に当てはまる場合には、自己資金が不要となります。

  • お勤めの経験がある企業と同じ業種の事業を始める方で、当該業種の企業に通算して5年以上お勤めの方
  • 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
  • 創業塾や創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業)を受けて事業を始める方
  • 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
  • 技術やノウハウ等に新規性が見られる方
  • 新商品や新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方
  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方

 

④ 法人は完全な無担保無保証で利用できる

新創業融資制度は、法人がこれを利用する場合には、「完全な無担保無保証」で利用することができます。

これは国内では唯一の制度といえます。

通常の無担保無保証融資とは、法人がこれを利用する場合 その代表者が連帯保証人となるのが普通です。

しかしこの制度では 法人代表者も連帯保証人となる必要がないため、万が一、その法人が倒産や返済不能となった場合でも、法人代表者が責任を負う必要がありません。

※ ただし、この場合には無担保無保証とならない場合と比べて、0.1%金利が高くなります。

なお、個人事業主については、法人のように申込人と代表者が分離されていないため、この優遇措置は適用されません。

 

新創業融資制度のデメリット

① 申し込みには一定の自己資金が必要

新創業融資制度の申し込みには、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必要となります。

そのため この最低の自己資金を用意できない場合には、申し込みをすることができません。

 

② 事業開始後、税務申告を2期終えるまでしか利用できない

新創業融資制度の申込みは、「事業開始後、税務申告を2期終えるまで」となります。

そのため、この期間を過ぎている場合は、他の融資制度を利用しなければならなくなります。

 

なお、ここで注意していただきたいのが、この期間は「2年」ではなく「2期」であるということです。

例えば 個人事業では 決算期は一律に12月末となっています。そのため令和5年10月に開業した場合は 2期の終期は令和7年の12月 となり、実質的な期間は 1年と2ヶ月となります。

また同様に 法人についても、9月に開業し、決算期を3月末とした場合は、実質的な利用期間は1年6ヶ月となります。

 

このように開業時期や決算期の決め方によって2年未満の期間しか利用できないこともあるため、利用できる期間は暦による2年ではないということに注意する必要があります。

 

③ 他の融資と比較して金利が高い

新創業融資制度は、他の融資制度よりも 金利が高めとなっています。

日本政策金融公庫の担保を提供する場合の基準金利は 1.10~2.90%、担保を不要とする融資制度の基準金利は 2.10~3.30%なっています。

これに対して、新創業融資制度の基準金利は2.40~3.60%とやや高めとなります。

 

④ 創業計画書の作成が不可欠

新創業融資制度の申し込みをする際には、必ず創業計画書を作成・提出しなければなりません。

またこの創業計画書のフォーマットは あらかじめ決められたものを利用する必要があります。

 

新創業融資制度は実績や担保が不要で利用できる制度のため、この創業計画書の内容が最も重視され、その内容の出来・不出来により融資額が大きく左右されることとなります。

 

⑤ 審査に時間がかかる

新創業融資制度は、通常時に比べて時間がかかるといえます。

一般的には、融資の申し込みから融資が出るまでに約1~1.5ヶ月の時間がかかるため、余裕を以って申し込まないと開業の予定時期に間に合わなくなってしまいます。

 

また、建設業などのように営業に許認可が必要となる場合には、その取得ができてからでなくては融資がでないため、これらのスケジュールにも配慮する必要があります。

※ ただし、例外的に飲食店については、営業許可が下りる前でも融資が出ることとされています。

 

なお、融資の審査の際に求められた資料の提出が遅れたり、準備ができないような場合には、さらに長い期間がかかります。

 

<一般的な融資のスケジュール>

① 融資申し込み

↓ (約10日前後)

② 担当者との面談

↓ (約2~3週間)

③ 審査結果

↓ (約1~2週間)

④ 融資の契約

↓ (約1~2週間)

⑤ 融資の実行

 

親等からの贈与資金は、もらい方に注意が必要

親や兄弟などから資金をもらった場合にはその資金は自己資金となりますが、その場合には、注意が必要です。

前述の説明のとおり、日本政策金融公庫では自己資金を判断する際に、主に通帳の経緯を見て確認しますが、親等からもらったお金であっても、それを現金で受け取って入金してしまうと通帳の摘要欄に記載がされないため、見せ金ではないかと疑われてしまう可能性があります。

そのため、この場合には、その関係を証明するため、さらに親の通帳を見せる必要が生じてきます。

したがって、このような誤解を生まないように親等から資金の援助をしてもらう場合には、現金でもらうのではなく、振り込みにしてもらう必要があります。

 

新規開業資金で実際に借りられる金額は?

以上のように、新規開業資金を申し込む方のほぼすべてが新創業融資制度を利用するため、新規開業資金でいくら借りられるかは新創業融資制度をどこまで活用できるかということになります。

新創業融資制度は、制度上は最大3,000万円まで利用できることとなっていますが、実際にこれだけの額を借りられる方はほとんどなく、一般的には1,000万円程度が上限とされています。

また、借りられる金額の大きさは自己資金の額と密接に関係しており、自己資金の額が大きいほど大きな額を借入れしやすくなります。

一般的に、融資が出やすいのは「自己資金額の3倍程度」とされています。

そのため自己資金額が300万円であれば1,000万円前後の借入れができる可能性がありますが、自己資金額が100万円の場合は300万円程度ということになってしまいます。

そのため、もし、自己資金額が100万円の方が1,000万円の申込みをした場合には、大幅に減額されるか、もしくは事業計画自体に無理があるものとして否決となってしまうこととなります。

このように新創業融資制度では制度上の上限額だけでなく、自己資金額の大きさと申込額に対するバランスが重要ということとなります。

 

新開業資金・新創業融資制度の必要書類

新創業融資制度の申込みには、以下の資料や書類が必要となります。
なお、新規開業資金の申込みは、新創業融資制度と同じ申込用紙で行うため、新規開業資金について特別な資料を用意する必要はありません。

個人事業
  • 借入申込書
  • 最近2期分の申告決算書(申告されている方)
  • 創業計画書
  • 設備資金の申込みの場合は見積書
  • 運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)のコピー
  • 許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)
  • 自己資金の確認できる通帳その他
法人 上記の他

  • すでに一基を過ぎている法人の場合は、確定申告書や決算書(勘定科目明細書を含む)の写し
  • 最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方)
  • 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本
その他
  • 給与明細書
  • 家賃の領収書
  • 公共料金の領収書
  • 住民税の納税証明書
  • 企業概要書
  • 会社のパンフレット など

 

まとめ

新規開業資金は、これから開業する方や開業間もない方が利用できる日本政策金融公庫の融資制度です。
申し込みをする方の状況にあわせて、いくつもの種類が用意されています。

ただし、この融資はそれ単独では担保や保証人が必要となるため、無担保無保証で利用するためには、新創業融資制度と併用する必要があります。

新創業融資制度は、無担保無保証で3,000万円(うち運転資金は1,500万円)まで利用でき、法人については代表者が連帯保証人となる必要がありません。

また、若者、女性、シニアなど一定の条件に該当する方については、優遇された金利で利用することができます。

ただし、申込みにあたっては、「事業開始後税務申告を2期までしか利用できない」ことや、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要」などの要件を満たす必要があるので注意が必要です。

 

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