日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の融資審査で見られる信用情報について解説!

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

融資の審査において重要なものの一つに「申込人の信用情報の確認」があります。

金融機関では、貸す相手の信用を重視するため、「信用情報に問題がないか?」については必ずチェックをしています。

しかし、日本政策金融公庫のような政府系機関でも信用情報の確認は行われているのでしょうか?

また、もし、問題があるときにはどのような影響があるのでしょうか?

この記事では、日本政策金融公庫の融資審査における信用情報の取り扱いとその影響、その他融資審査で注意すべき点について解説いたします。

 

日本政策金融公庫と信用情報機関との関係

日本政策金融公庫の融資については、「信用情報を見られなかった」、「ブラックでも借りられた」という情報が一部で出回っていることがあります。

確かに以前は信用情報の確認が今ほど厳密ではなかったときもあったようですが、現在では日本政策金融公庫は審査の際に必ず信用情報を確認しています。

また、このことは借入申込証の裏面にも明記されています。

2.個人信用情報機関の利用・個人信用情報機関への登録等

① 公庫が必要と認めた場合、公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関および同機関と提携する個人信用情報機関にお申込人(法人の場合は代表者の方)の個人情報(各機関の加盟会員によって登録される契約内容、返済状況等の情報)が登録されている場合には、それを与信取引上の判断(返済能力の調査または転居先の調査をいう。ただし、返済能力に関する情報については返済能力の調査の目的に限る)のために利用させていただきます。

② 公庫がこのお申し込みに関して公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関を利用した場合には、その利用した日および本申込の内容等が同機関に6か月間登録され、同機関の加盟会員によって自己の与信取引上の判断のために利用されます。

③ このお申込により公庫から借入する場合、借入金額、契約締結日および返済状況等の当該借入に関する個人情報が、公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関に登録され、同機関の加盟会員および同機関と提携する個人信用情報機関の加盟会員によって、自己の与信取引上の判断のために利用されます。

(注)個人情報登録機関は、次の通りです。

1. 公庫が加盟し利用・登録する個人信用情報機関  株式会社 シーアイシー

2. 前1の機関と登録する個人信用情報機関  全国銀行個人信用情報センター

株式会社 日本信用情報機構

 

以上のように日本政策金融公庫では、CICを中心とした提携を行っており、それ以外のすべての機関とも情報の交換をしています。

そのため、過去に事故情報がある場合には、絶対融資が受けられなくなるというわけではありませんが、現実的にはかなり厳しいものとなります。

 

なお、この記載に出てくるCICと株式会社日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センターについては以下の通りとなります。

また、これらの機関はCRINを通じて、相互に事故情報等を好感しているため、1か所で延滞や滞納を起こした場合には、すべての機関でその情報が共有されることとなります。

 

<CIC(株式会社シー・アイ・シー)>

CICは、クレジット会社の共同出資により昭和59年に設立。主に割賦販売や消費者ローン等のクレジット事業を営む企業を会員とする信用情報機関です。

また、CICは、割賦販売法および貸金業法に基づく指定信用情報機関として指定を受けた唯一の指定信用情報機関となっています。

 

<JICC(株式会社日本信用情報機構)>

JICCは、1,986年(昭和61年)6月に設立された信用情報登録機関の一つで、信用情報の収集・登録・管理・提供並びに交流を主な業務としています。

JICCでは、貸金業法または割賦販売法に基づく登録事業者、貸付けを業として行う事業者、信用保証業者、またはリース業者等を会員として構成されています。

 

<全国銀行個人信用情報センター>

全国銀行個人信用情報センターは消費者信用の円滑化等を図るために、一般社団法人全国銀行協会が設置、運営している個人信用情報機関です。

同センターでは、ローンやクレジット、運営している個人信用情報機関で会員における与信取引、ド等に関する個人信用情報を登録し。判断のための参考資料としています

同センターは、銀行やその他の金融機関、政府関係金融機関(これに準ずるものを含む)、クレジットカード会社、保証会社により構成されています。

 

※CRINとは

CRIN(Credit Information Network)とは、CICおよび全国銀行個人信用情報センター、株式会社日本信用情報機構の三機関間で行っている交流ネットワークで、それぞれの信用情報機関が保有する信用情報のうち、延滞に関する情報および各信用情報機関に本人が申告した本人確認書類の紛失盗難に関する情報などを交流しています。

 

各信用情報機関の会員会社は、加盟する信用情報機関を通じて、この「CRIN」を利用することにより、消費者への過剰貸付の防止、多重債務者の発生を防止しています。

 

「信用情報」とは?

信用情報とはどのようなものを指し、どこが取り扱っているのかや、どのような情報が問題になるのかについて解説いたします。

信用情報について

そもそも「信用情報」とは何を指すのかということについてですが、信用情報とは、「ローンやクレジットの利用などの信用取引に関する、過去から現在までの客観的な取引事実を表す情報」とされています。

そのため、例えば20215.05.01に新規にクレジットカードを作成・利用し、2016.08.01に車のローンを組み、2021.07.31にローンの完済をしたような場合には「クレジットカードの契約・利用」、「車のローンの契約、期間中の返済、完済」に関する情報が登録されます。

 

なお、信用情報と個人情報とでは、個人情報が「生存する個人に関する情報であり、氏名・生年月日・その他の特定の個人を識別できる情報」であるのに対して、信用情報は、「信用取引における契約内容や返済状況に関する客観的な取引事実を表す情報」を指すという違いがあります。

 

具体的には、本人を特定するための情報や契約内容、返済状況に関する情報等から構成されますが、思想・信条・趣味などの情報は信用情報に含まれません。

また、生存する個人に関する情報が対象となるため、死亡した人や法人などは対象となりません。(ただし、法人代表者は対象)

 

信用情報の開示について

自分の信用情報を知りたい場合には、以下の手続きにより情報の開示を受けることができます。

【信用情報登録機関への開示請求の流れ】

信用情報登録機関への開示請求は、本人・法定代理人・任意代理人・三親等以内の血族または法定代理人のいずれかから行うことができますが、それぞれで手続きが異なります。

以下では本人からの請求のケースについてご説明します。

また、請求はスマホ・郵送・窓口のいずれかの方法で行うことができます。

 

<スマホ請求の場合>

  1. 指定のアプリをダウンロードする
  2. 本人認証手続きをする
  3. 申込人の情報を入力する
  4. 所定の手数料の支払い手続きをする
  5. スマホアプリまたは郵送で開示結果を受取る

 

<郵送請求の場合>

  1. 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)を準備する
  2. 所定の信用情報開示申込書に必要事項を記入し、印刷する
  3. コンビニエンスストアで郵送開示利用券を購入する
  4. 「必要書類一式」と「開示手数料」を所定の送付先まで送付する
  5. 開示結果が開示対象者本人の現住所(郵送先住所)へ郵送される

 

情報開示により確認できる内容

情報開示請求をした場合には、以下の情報の確認をすることが可能です。

※下記はCICの例

  1. クレジット情報(クレジットやローン等の契約内容や支払状況、残高などの情報)
  2. 申込情報(新規にクレジットやローン等を申し込んだ際に、クレジット会社等が支払能力を調査するために確認した情報)
  3. 利用記録(クレジット会社等が、クレジットやローン等の利用途上などにおける審査のために、信用情報を確認した記録)
  4. 参考情報(信用情報機関が独自に収集した情報)

 

信用情報の保存期間について

取得された信用情報は、その内容に応じて一定期間、信用情報機関に保存されます。

また、保存期間は機関により多少異なりますが、CICと全国銀行個人信用情報センターにおける取り扱いは以下の通りとなっています。

※https://www.jfc.go.jp/n/privacy/pdf/privacy_01.pdf

 

登録情報 登録期間
株式会社シー・アイ・シー 全国銀行個人信用情報センター
ア 氏名、生年月日、性別、住所(本人への郵便不着の有無等を含みます。)、電話番号、勤務先等の本人情報 ア、イ、ウ及びキの情報の いずれかが登録されてい る期間 アからキまでの情報のいずれかが登録されている 期間
イ 借入金額、借入日、最終返済日等の本契約の内容及びその返済状況(延滞、代位弁済、強制回収手続、解約、完済等の事実を含みます。) 本契約期間中及び本契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年間 本契約期間中及び本契約終了日(完済していない場合は完済日)から5を超えない期間
ウ 公庫が加盟する個人信用情報機関を利用した日及び本契約又はその申込の内容等 当該利用日から6ヵ月間 当該利用日から1を超えない期間
エ 不渡情報 第1回目不渡は不渡発生日から6ヵ月を超えない期間、取引停止処分は取引停止処分日から5年を超えない期間
オ 官報情報 破産手続開始決定等を受けた日から 10 年を超えない期間
カ 登録情報に関する苦情を受け、調査中である旨の情報 当該調査中の期間
キ 本人確認資料の紛失・盗難、貸付自粛等の本人申告情報 本人から申告のあった日から5年を超えない期間 本人から申告のあった日から5年を超えない期間

(注)全国銀行個人信用情報センターへの登録は、教育貸付制度をお申込のお客さまに限

ります。

 

信用情報開示報告書の見方のポイント

情報登録機関に請求することで信用情報の開示報告書を入手することができますが、その際に注意してみるべき情報は以下のとおりです。

 

〇「残債額」欄

この箇所には利用したローン等の残債額が記載されます。

したがって、この欄の金額が大きいときには、融資判断に影響します。

日本政策金融公庫では、融資の貸出をする際には申込人の能力で返済ができるかを確認します。

具体的には、事業計画書に記載された予想利益や配偶者の年収、その他の見込み収入をベースに判断しますが、その際に既存のクレジット等の残債があると、そこから返済分を差し引いて計算します。

そのため、これらの差し引きの結果、予定通りの利益の確保が難しいと判断した場合には融資の否決や減額につながるため、ここの欄の額が大きいほど融資に不利となります。

 

〇「返済状況」欄

申込人について

  • 長期にわたる支払いの遅れ(61日以上または3か月以上)
  • 保証会社による弁済
  • 裁判所による破産宣告がされた場合

の事由がある場合には、この箇所に「異動」と記載されます。

異動の記録は、延滞等が解消した後も、その情報の保有期限が来るまで残ります。

 

〇「終了状況」欄

表示 内  容
完了 支払いが完了し お客様とクレジット会社等の契約が終了したもの
本人以外弁済 お客様以外(保証会社など)から支払いがされたもの
貸倒 クレジット会社等が貸倒れとして処理したもの
移管終了 ①複数の契約を一本化するため契約は終了扱いとなったもの

②クレジット会社等が利用者との契約(債権)を第三者に譲渡したもの

法定免責 支払いの免除が法的に認められたもの(破産)
(空欄) 契約が継続中のもの

この欄で注意しなければならないのが、「本人以外弁済」、「貸倒」、「法定免責」の項目です。

「本人以外弁済」は、本人が弁済できず、保証会社が代わりに弁済(代位弁済)したことを意味します。

「貸倒」は、保証会社がいない貸付等で本人が弁済できなかったため、クレジット会社等が貸倒処理したことを意味します。

また、「法定免責」は、利用者が破産して裁判所に免責を認めてもらったことを意味します。

そのため、この欄にこれらの記載がある場合は融資に不利となります。

 

〇「入金状況」欄

ここに記載される記号の意味は、以下の通りなります。

記号 内  容
請求通り(もしくは請求額以上)の入金があった
請求額の一部が入金された
お客様以外から入金があった
お客様の事情でお約束の日に入金がなかった(未入金)
お客様の事情とは無関係の理由で入金がなかった
入金されていないがその原因が分からない
請求もなく入金もなかった
空欄 クレジット会社とから情報の更新がなかった

このうちとくに注意しなければならないのがPやAです。

Pはまだ支払い債務が残っていることを、Aはそもそもまったく入金がされていないことを意味します。

そのため、融資審査において申込人の信用情報欄にこのような記号が記載されている場合には、融資判断に悪影響となります。

 

融資申し込み時における信用情報以外の注意点

融資審査において注意しなければならないのは、代表者の個人情報だけではありません。

それ以外にも、申込人について次のような事由がある場合には融資が難しくなってしまいます。

① 家賃、公共料金等の延滞や未払い

日本政策金融公庫に限らず、金融機関では、申込人の信用状況を重視します。

個人情報では、原則61日以上または3か月以上の長期延滞をした場合にその情報が記録されますが、日本政策金融公庫等ではこれ以下の延滞等についても神経をとがらせています。

そのため、融資の申込人に家賃や公共料金、各種のローン(住宅ローンを含む)の延滞や支払い遅れがあると融資が難しくなります。

通常、この判断は融資申込以前6か月〜1年前までの通帳の支払い履歴や公共料金の領収書などを見て確認しますが、この期間内に1度でも延滞等があると、それだけで融資を断られてしまうことがあるため注意が必要です。

 

② 税金の支払いの未納

一般的な融資の審査においては、創業融資を除き、税金の支払いができていることが条件となります。

なぜそこまで税金の支払いにこだわるのかといえば、税金の未納による差し押さえは民間の債権よりも優先して取り立てできるためです。

また、本来、期限までに税金は納付するのが義務であるため、これができていない場合には「支払いにルーズな人」と判断されます。

融資審査で審査の対象となる税金には、消費税、法人税、法人住民税、市民税などがありますが、住宅を所有している方については固定資産税もその対象となります。

これに対して、社会保険料や年金などの納付については、それほど厳しくみられることは少ないですが、社会保険料の源泉徴収分を事業に流用している場合には、預り金の使い込みという判断をされるため厳しい判断となることがあります。

 

③ 自己資金の不足、または見せ金である

日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する際には「創業経費の1/10以上の自己資金を保有していること」が条件となっています。

そのため、その額に満たない額の自己資金しか保有していない場合には融資を利用することができません。

また、新創業融資制度では、この規定とは別に、実際に融資される額の目安は自己資金額の3倍程度とされています。

そのため創業経費の1/10以上の自己資金が確保できている場合でも、この水準に合わない額の自己資金しかない場合には、融資の減額や否決となりやすくなります。

見せ金とは、他から一時的に借りてきた資金を使って自己資金があるように見せることをいいます。

しかし、見せ金は通帳の履歴などを見れば簡単にばれてしまいます。

このような見せ金行為をした場合には、その融資がダメになるだけでなく、その情報が日本政策金融公庫にずっと保管されるため、その後の融資の借入れも難しくなってしまいます。

 

④ 他の取締役に信用情報の問題がある

日本政策金融公庫では個人情報の確認をするのは代表取締役に限らず、ケースによっては平取締役についても確認をしています。

そのため、代表者には何の問題がなくとも、他の取締役に延滞や未払い、法的整理などの事情がある場合には、それが原因で融資が不可となってしまうことがあります。

 

⑤ テナントの契約に問題がある

創業融資の場合で自宅を法人事務所として登録しているケースがよくありますが、その際には大家と法人で賃貸借契約をしていることが必要です。

日本政策金融公庫ではこれを確認するため、賃貸借契約の提出を求めます。

とくにその時に契約書中の「部屋の用途」の箇所が「事務所」ではなく、「居宅」となっている場合には、事業に利用できない物件と判断され、融資が出ないことがあります。

 

信用情報の確認は忘れずに

融資の審査において申込人の信用情報は重要な確認事項であり、現在では必ずチェックされています。

そのため、信用情報に長期の延滞や未払いがある場合には、融資を利用するのがほぼ難しくなってしまいます。

信用情報は何の対策もしない間はそのまま残り続け、また、返済をしてもすぐに履歴が消えるわけではないので、融資を受けたいのであればできるだけ早い時期に支払いするなどの対策を取っておく必要があります。

もし、自分の信用状況がどうなっているのかわからないという場合は、スマートフォンからも簡単に信用情報登録機関へ確認することができるので、心配がある方は事前に確認しておくことをおすすめします。

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北村嘉章税理士事務所では創業融資のサポートを行なっております。

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