日本政策金融公庫

銀行融資の金利はどのくらい?低金利で融資を受けられる方法はある?

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

事業資金の確保のために融資を利用することは多いと思いますが、その際に気になるのが金利です。

せっかく思うような借入れができても、金額が大きいときはそれに見合った金利が発生するため、経営を圧迫する要因となります。

また、中には、プロパー融資や政府系融資の一部の制度のように金融機関の所定利率が適用されるものもあるため、どのように金利が決定されるのかを知っておくことも融資決済のための重要な要素となります。

この記事では、融資の金利の決め方や種類、金利を安くする方法について解説いたします。

 

融資の金利について

金融機関の融資の金利は、固定金利と変動金利の2種類に大きく分けることができます。

固定金利と変動金利

① 固定金利

固定金利とは、初回~終了までの間、同じ利率が適用されるタイプの金利をいいます。

代表的な政府系金融機関である日本政策金融公庫では、ほとんどの融資がこのタイプの金利となっています。

通常、固定金利は10年物国債の金利に連動する形で設定されます。

固定金利は、返済途中における金利変動の影響をうけないため返済計画の見通しを立てやすいといえます。

ただし、金利は変動金利と比べて、利率が高くなるのが一般的です。

 

② 変動金利

変動金利とは、一定の期間ごとに利率を見直すタイプの金利をいいます。

日本政策金融公庫では、「創業支援貸付利率特例制度」など一部の融資がこれに該当します。

変動金利は、固定金利に比べて利率が低くなりますが、長期間の動向を見通すことが難しいため、短期で返済が完了する融資などに向いています。

また、変動金利はその時の情勢にあわせて他の融資に切り替えがしやすいというメリットがありますが、金利の上昇局面においては予想外に高金利となり負担が重くなることがあります。

 

日本政策金融公庫の金利について

日本政策金融公庫では数多くの融資を取り扱っており、適用される金利もそれぞれでことなります。

ここでは日本政策金融公庫の代表的な融資の金利についてご紹介します。

※ 以下の金利はすべて令和5年12月時点での標準金利となります。

 

融 資 名 金  利
新創業融資制度 2.40%~3.60%
担保を提供する融資 1.10%~2.90%
担保を不要とする融資 2.10%~3.30%
経営者の保証を不要とする融資 ベースとなる融資金利に0.1%~0.2%を上乗せ
マル経融資 1.20%
災害貸付、東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)、新型コロナウイルス感染症特別貸付または令和2年7月豪雨特別貸付 1,20%~2.40%
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) 毎年の業績に応じた利率を適用

 

上記の金利を見ると担保を提供する融資やマル経融資、新型コロナウイルス感染症特別貸付などといった日本政策金融公庫にとってリスクの低い融資や、国策にもとづく融資の金利が低くなっている半面、新創業融資制度や担保を提供する融資などの金利が高くなっていることがわかります。

なお、融資の返済が期限通りにされなかった場合には遅延損害金が発生しますが、日本政策金融公庫における遅延損害金の利率は年8.70%となっています。(令和5年4月1日から令和6年3月31日までの貸付け)

また、信用保証協会の保証付融資を利用して弁済ができなくなり、協会に代位弁済をされた場合も遅延損害金が発生しますが、こちらの利率はさらに高く約14%となります。

 

新創業融資制度とその他の融資の関係

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業者の方が無担保・無保証で利用できる融資制度ですが、実はこれは単体の融資制度ではありません。

本来、この新創業融資制度とは、担保や保証が必要な融資を無担保無保証で利用するためにベースとなる融資制度に上乗せして利用するため制度です。

 

日本政策金融公庫では創業者向けの融資として「新規開業資金(一般)」や「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」、「新規開業資金(再挑戦支援関連)」、「新規開業資金(中小企業経営力強化関連)などの融資を用意していますが、これらはいずれもそのままでは無担保無保証ではありません。

しかし、これらの融資を使いやすくするため、新創業融資制度という無担保無保証の制度を使って併用できるものとなっています。

そのため金利についても本来、新規開業資金を担保または保証付で利用した場合には1.10%~2.90%の金利となりますが、これに新創業融資制度を併用した場合には新創業融資制度の金利である2.40%~3.60%が適用されることとなります。

ただし、「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」を利用した場合、女性の方、35歳未満または55歳以上の方については特別利率A(土地にかかる資金は基準利率)が適用されるため、その分金利が低くなります。

 

金利決定の要因について

金融機関では、主に以下の要因にもとづいて具体的な金利を決定しています。

ただし、個別の金利はその方の資力や信用力により決定されるため、同じ融資制度を利用していても適用される金利が異なることに注意が必要です。

金融機関の種類

通常、金融機関の金利は

 

 

 

  • プロパー融資(無担保・無保証)
  • プロパー融資(担保または保証あり)
  • 政府系金融機関(無担保・無保証)もしくは信用保証協会の保証付融資
  • 政府系金融機関(担保または保証あり)もしくは信用保証協会の保証付融資
  • 政府系金融機関やまたは制度融資のうち特別な制度(マル経融資など)

となっています。

なお、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付融資では、融資の種類により適用される金利の上限と下限が決められており、その中で金利が決定されますが、プロパー融資ではこのような限度はありません。

経済状況の変動

固定金利は10年国債の利回りを基準として、変動金利は短期プライムレートと呼ばれる金利を基準として決定されます。

そのため、これらの金利の見直しが行われた場合には、1~2か月後に適用される金利が変更されます。

担保・保証人の有無

銀行等の融資では、原則として、担保または保証人が必要となります。

これらを用意できる場合には低めの金利が適用されます。

特別な条件の有無

日本政策金融公庫の融資では、一定の要件を満たせるときには、金利が低くなる場合があります。

例えば、女性、若者/シニア起業家支援資金の場合は、通常は特別利率Aが適用されますが、技術・ノウハウ等に新規性がみられる方については特別利率A・B・Cのいずれかが適用されます。

また、新創業融資制度のような創業者を対象とした無担保無保証融資については、通常の融資より高めの金利が設定されています。

申込額や返済期間の長さ

融資の金利は、申込額や返済期間の長さによっても影響をうけます。

一般的には、申込額が多い、返済期間が長いほど金利は高くなります。

信用力や取引きの量・内容

金利は以上の要因の他、借主の信用力によっても変わります。

信用力が高いほど低い金利が適用されます。

また、プロパー融資においては、申込人がその銀行に対してどれだけの取り引きをしているかも金利の決定の際に考慮されます。

 

これには、「融資のメインバンクとなっているか?」、「入出金や振り込みなどの取引の量が多いか?」、「定期預金や積立をしているか?」、「公共料金や年金の引き落しをしているか?」、「従業員の給与の振り込みをしているか?」などが対象となります。

 

そのため、これらの取引きが多いほど優良顧客として優遇した金利をつけやすくなりますが、これらの取引が少ない場合には、取引の採算性が低いものとされるため、交渉で金利を引き下げる余地は乏しくなります。

 

信用保証協会付融資は、信用保証料にも注意

日本政策金融公庫の融資では金利のみを支払えばよいですが、制度融資などの信用保証協会付融資を利用する場合には、金利とは別途に「信用保証料」が必要となります。

そのため、あらかじめこれを理解していないと、予想外の支出に驚くこととなります。

 

では、日本政策金融公庫と比べて制度融資は保証料がある分割高なのかといえば、決してそうではありません。

例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度の基準金利は、2.4%~3.6%となっています。

これに対して、東京制度融資の表面的な利率は1.7%~2.2%以内であり、また標準的な保証料は約1.0%となります。 ※いずれも令和5年12月現在

 

しかし、東京都制度融資の一般的な創業制度である創業支援特例では上記より金利が0.4%優遇され、また同時に信用保証料もその2/3が補助されます。

そのためこれらを考慮した金利や信用保証料の負担は以下のとおりとなります。

補助なし 補助あり
金利 保証料 金利 保証料
日本政策金融公庫 2.4%~3.6% 0 2.4%~3.6% 0
東京都制度融資(創業支援特例) 1.7%~2.2% 1.0%前後 1.3%~1.8% 0.3~0.4%

 

そのため利息や信用保証料の補助がまったくない場合でも利率と信用保証料の合計は2.7%~3.2%となり、新創業融資制度よりもやや安いこととなります。

さらにこれを補助ありの金利等で比較した場合は1.6~2.2%となり、新創業融資制度よりも創業支援特例の方がトータルで割安になることがわかります。

 

しかし、制度融資は自治体ごとに行われているもののため、自治体ごとに制度や金利等の条件が異なります。

そのため、すべての制度融資が新創業融資制度よりも割安というわけではありませんが、思うほど信用保証料の負担は大きくないということがわかります。

 

金利の低い融資制度

以下の融資制度では通常よりも低い金利が適用されます。

これらを利用するには一定の条件を満たす必要がありますが、難易度の高いものは少ないため、要件を満たせる場合には低い金利で融資を利用することが可能です。

【日本政策金融公庫】

<マル経融資>

利用条件 商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者。

なお、利用にあたっては商工会議所等の推薦が必要となります。

融資限度額   2,000万円
返済期間 運転資金 7年以内(据置期間1年以内)

設備資金 10年以内(据置期間2年以内)

利 率  1.2% ※2023.12現在
担保・保証 不要

 

<新型コロナウイルス感染症特別貸付>

利用条件 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方
融資限度額   8,000万円(別枠)
返済期間 運転資金 20年以内(据置期間5年以内)

設備資金 20年以内(据置期間5年以内)

利 率 基準金利

ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.5%(注2)、4年目以降は基準利率

担保・保証 担 保:無担保
保証人:要相談

※本制度は令和6年3月31日まで延期されました。

※令和5年10月1日(日)の申込受付分から、融資後3年目までの金利引下げ幅が縮小(基準利率-0.9%→基準利率-0.5%)となりました。

 

なお、設備資金の借入れについては、以下のような優遇制度が用意されています。

<日本政策金融公庫の設備資金優遇制度>

利用条件 次の融資制度で設備資金をご利用される方であって、5年間で2%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる設備投資を行う方(注)

(1)一般貸付

(2)特別貸付(挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)、海外展開・事業再編資金、企業再生貸付の一部および新規開業資金の一部を除く。)

(3)マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

(4)生活衛生貸付(生活衛生改善貸付を含む。)

融資限度額  各融資制度に定める融資限度額
利 率 各融資制度に定める利率-0.5%(ご融資日から2年間)

(※)利率の下限は0.3%

返済期間 各融資制度に定めるご返済期間以内

 

【制度融資】

東京都制度融資(創業支援特例)

利用条件 (1)現在事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有するもの

(2)創業した日から5年未満である中小企業者又は組合

(3)分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から5年未満の中小企業者

融資限度額   3,500万円
返済期間 運転資金  7年以内(据置期間1年以内)

設備資金 10年以内(据置期間1年以内)

利 率 1.7%以内~2.2%以内〔創業支援特例は上記より0.4%優遇〕
信用保証料 2/3を補助
担保・保証 無担保・無保証

 

足立区制度融資(小口零細資金)

利用条件 小規模事業者であること
融資限度額   2,000万円
返済期間 運転資金および設備資金 ※併用可
利 率 金融機関所定金利

ただし、貸付利率の2/3を補助(上限1.6%)

信用保証料 運転資金については1/2、設備資金については2/3を補助
担保・保証 無担保・無保証

 

台東区制度融資(開業支援資金)

利用条件 (1)営業の本拠地(かつ法人にあっては本店登記地)が台東区内であり、今後も引き続き区内で営業される方

(2)事業を営んでいない個人が、1ヶ月以内に新たに個人で開業、または2ヶ月以内に新たに法人を設立して創業しようとする方

(3)事業を営んでいない個人(事業所得で確定申告をしていない方)が、個人または法人で創業し、創業した日から1年未満の方。

融資限度額   1,000万円 ※ただし、自己資金額3倍程度の範囲内
返済期間 運転資金および設備資金
利 率 1.8%以内(区補助1.8%以内、本人負担0%)
信用保証料 全額補助 原則として、信用保証協会の信用保証を要します。
担保・保証 無担保・無保証

 

 

金利を引き下げる方法

融資の金利は、以上のような要因にもとづいて決定されますが、次のことをすることで金利を下げられる可能性があります。

返済の実績を積む

金融機関が融資審査で重視するのは、「これまでの信用=返済の実績」です。

既存の融資の返済で、支払いの遅れや延滞などがなく、計画通りに返済が行われている場合には、金融機関もこれを高く評価するため、金利の低減につながります。

信頼できる決算書を作成する

企業の財務内容の審査をする上で、最も重要となるのが「決算書」です。

財務内容がよい場合には、低い金利が適用されやすくなります。

ただし、金融機関に信頼できる決算書と認めてもらうためには、単に黒字になっているというだけでなく、その内容が公正な会計基準にもとづいて作成されている、正しい評価が計上されているなどの必要があります。

特許や公的な認証を取得している

企業が、特許や国・都道府県の認証などを取得している場合には、その経営が高く評価されるため、金利の引き下げに影響を及ぼす一因となります。

精度の高い事業計画書を提出する

精度と実現可能性の高い事業計画書を提出することにより、金融機関の信用を獲得することができます。

また、このような取り組みについては、金融庁も金融機関はこれを支援するべしとされていることから、金利の引き下げが期待できます。

担保や保証人を用意する

担保や保証人を用意できる場合には、無担保・無保証融資の場合よりも、低い金利が適用されます。

金利が優遇される融資制度を使う

「企業活力強化資金」などの一部の融資では、該当する条件に応じて、通常よりも低い金利が適用されます。

 

金利だけで融資を選ぶのは間違い

融資制度を選ぶ際に金利だけを見て選ぶのは間違いです。

なぜなら、融資制度では個別に条件が決められているため、この条件にあわない場合は、そもそも申込みができなかったり、申し込みができても融資審査で不利となってしまうからです。

融資の申込みで最も重要なのは、必要額の資金を得ることです。

したがって、無理に金利の低い融資を選ぶのではなく、その内容が自分の状況にあったものを選択することが重要となります。

 

また、金利は一定期間ごとに変更されますが、できるだけ低いときに申し込もうとすると、融資のタイミングを逃してしまうことになります。

長期で大きな金額を借りるときは僅差の負担でも大きなものとなりますが、そうでない場合は返済額に影響が出ないケースがほとんどです。

それよりも普段から金融機関の信用を得られるよう、会社の財務状況の改善や前向きな取り組みを行うことが金利の引き下げに貢献します。

 

まとめ

融資の金利は申込人の信用力に応じて決定されますが、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付融資(制度融資)などは、適用される金利の上限と下限が決まっているので、その中で金利が決定されます。

なお、具体的な金利は、申込人の信用力等を考慮して決められますが、「決算書の内容をよくする」、「返済の延滞や未納をしない」、「詳細かつ実現性の高い事業計画を作る」などをすることでより低い金利の適用を受けやすくなります。

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