日本政策金融公庫

創業融資における自己資金とは?自己資金なしでも融資を受ける方法はある?

この記事の監修
       

代表税理士
北村 嘉章

所属 四国税理士会丸亀支部 税理士登録番号137832
北村嘉章税理士事務所 代表税理士
合同会社 N village consulting 代表社員
穴吹カレッジ「香川県留学生支援会」 監事
家族 妻と長女と長男の4人家族
職歴 日亜化学工業株式会社(青色発光ダイオード)特許部
大手税理士法人である税理士法人ゆびすいで税理士登録
税理士業界での経験年数は10年

日本政策金融公庫の新創業融資制度をはじめ、多くの創業融資では一定の「自己資金」が要件となっています。

そのため、自己資金がない、もしくは少ない場合には、融資の申込額が低くなってしまうだけでなく、融資そのものの申込みができなくなってしまいます。

この記事では、創業融資における自己資金の必要性やどんなものが自己資金となるのか、自己資金がなくとも利用できる融資について解説いたします。

 

創業融資で必要な「自己資金」とは?

「自己資金」とは、事業を行う際に必要となる元手となる資金を意味します。

自己資金が少なくとも創業そのものはすることはできますが、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用するには一定以上の自己資金が必要となります。

 

新創業融資制度では、自己資金が必要な方やその額について、以下のように定めています。

 

<自己資金が必要な方>
  • 開業前の方
  • 開業後、まだ決算書の提出をしていない方
<必要となる自己資金の額>
  • 創業に関する経費のうち1/10以上の自己資金

 

新創業融資制度に関わらず、自治体が行っている制度融資を利用する際にもほとんどの場合自己資金が申込要件となっています。

そんな創業融資を成功させるために必須となっている自己資金ですが、「何が自己資金として認められる、認められない」のかを把握しておく必要があります。

 

自己資金として認められるもの

新創業融資制度を申し込みするにあたって、準備した資金の全てが自己資金として認められるわけではありません。

自己資金として認められない資金もありますので、あらかじめ把握しておきましょう。

まずは新創業融資制度で自己資金として認められる資金を5つご紹介します。

  1. コツコツと通帳等にためた資金
  2. 国債や有価証券、生命保険の解約返却金
  3. 親族からもらった(贈与された)資金
  4. 退職金や相続資金
  5. みなし自己資金

それぞれ解説します。

コツコツと通帳等にためた資金

「コツコツと通帳にためたお金」とは、それまでの給料を継続的に貯めたような資金がこれに該当します。

金融機関では、自己資金の確認をする場合には通帳の原本を提出させ、6ヶ月~1年前までの履歴を見て、どのような形で自己資金を貯めてきたかを確認します。

また、その内容に不審な点がある場合にはさらに経緯を聞かれたり、その内容を証明する資料の提出を求められます。

国債や有価証券、生命保険の解約返却金

「国債や有価証券、生命保険の解約返却金」については、その額やどのように取得したのかなどが確認されます。

しかし、この場合にはこれらを解約して通帳に入金しなくとも、その時点での時価を証明するもの(経済新聞の指標や保険会社からの見積書など)があれば、それにもとづく額を自己資金として認めてもらえます。

親族からもらった(贈与された)資金

「親族からもらった(贈与された)資金」は、親や兄弟などから事業への協力金としてもらったお金が対象となりますが、「借りたお金」は返済義務があるため、自己資金とはなりません。また、ケースによっては、親等の通帳の提示を求められることもあります。

退職金

「退職金」は、会社を退職した際に支給されるものですが、これについては通帳の記録だけでなく、退職金の支払い証明書などその資金が退職金であることがわかる必要があります。

みなし自己資金

「みなし自己資金」とは、融資の申込み前に事業のために購入したり、支払った資金のことをいいます。

たとえば、融資の申し込み前にテナントの保証金として100万円を支払っているような場合には、この100万円は申し込み時には存在しませんが、事業のために先払いした費用として自己資金として認めてもらうことができます。

 

自己資金として認められないもの

続いて、自己資金として認められない資金を4つご紹介します。

  1. タンス預金(現金で貯めたお金)
  2. 他から借りてきた資金
  3. 出どころの説明できないお金
  4. 事業に使わない資金

それぞれ解説します。

タンス預金

「タンス預金」とは、500円玉貯金のように、自宅に現金で保管しているお金のことをいいます。

このようなお金は、それが自分で貯めたものなのか、それとも他から一時的に借りてきたものなのかの区別がつかないため、自己資金として認められません。

ただし、このようなお金であってもこれを通帳に1年以上前から入金しているような場合には、自己資金として認めてもらえることもあります。

他から借りてきた資金

「他から借りてきた資金」については、返済義務のあるお金なので自己資金とはなりません。

出どころの説明できないお金

「出どころの説明できないお金」とは、通帳には入金されているが、どのような経緯や理由で入金されたのかを説明できない資金をいいます。

貯めた経緯や出どころをはっきりと説明できないものについては、自己資金として認められません。

事業に使わないお金

「事業に使わないお金」とは、通帳に入金されていても、実際に事業で使う予定ではない資金をいいます。

自己資金は事業計画の中でこれを使うことが前提となります。

そのため、通帳に入っていても事業に使う予定ではない資金であれば、その金額は除いて事業計画書をつくる必要があります。

たとえば、通帳に1,000万円の残高がある場合でも、そのうちの400万円を事業で使う予定がないのであれば、自己資金は600万円となります。

 

自己資金が足りない場合どうすればよい?

創業融資を受ける際に自己資金が足りない場合は下記の方法を検討しましょう。

  • 親族から援助をしてもらう
  • みなし自己資金を活用する
  • クラウドファンディングを利用する

親や兄弟などから援助をしてもらう

親や兄弟などから援助してもらったお金は、自己資金として扱うことができます。

親や兄弟などから援助をしてもらう場合は、贈与契約書を作成して贈与者の収入や資産状況を証明する書類を用意する必要があります。

贈与契約書がない場合は、自己資金として認められないため注意しましょう。

みなし自己資金を活用する

会社設立前に設備投資や運転資金として既に使っているお金に関しても、自己資金として認めてもらえる可能性があります。

既に使っているお金を自己資金として認めてもらうためには、何にいくら使ったのかがわかる領収書や請求書などが必要になるため、準備しておきましょう。

クラウドファンディングを利用する

自己資金を増やす方法として、クラウドファンディングで出資者を募る方法もあります。

クラウドファンディングを活用することによって、自己資金を増やすだけではなく、事業の認知性も高めることが可能です。

インターネットを通じて知らない人から資金を募る仕組みのため、事業の強みや実現可能性などの計画をしっかりとアピールし、リターンを魅力的に設定することで支援者を集めやすくなります。

またクラウドファンディングで得たお金を自己資金として認めてもらうために、関連した書類も準備する必要があります。

自己資金なしで融資を受ける方法はあるの

新創業融資制度では、1/10以上の自己資金の保有が融資の条件となっているため、自己資金なしの融資は難しいといえます。

しかし、以下の融資では、一定の条件を満たす場合には自己資金が免除されたり、そもそも自己資金が要件となっていなかったりします。

 

したがってこれらの制度を利用したり、条件を満たせる場合には、自己資金なしでも融資を受けられる可能性があります。

 

自己資金が不要な融資制度

創業者の方が利用できる融資制度で、自己資金が融資申込の要件となっていないものとしては、次のようなものがあります。

 

  1. 挑戦支援資本強化特例制度
  2. 新型コロナウイルス感染症特別貸付
  3. マル経融資

新創業融資制度で自己資金が不要となるケース

以下の条件のいずれかに該当する場合には、自己資金なしでも新創業融資制度に申し込むことができます。

 

①現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方

  • 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
  • 現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

②大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

③産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方

④民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

⑤技術・ノウハウ等に新規性が見られる方

⑥新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

⑦「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方

まとめ

この中には、条件を満たすのが難しいものもありますが、「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けることなどは、比較的簡単にすることができます。

「中小企業の会計に関する指針」とは、「中小企業の会計に関する指針作成検討委員会」によって作成された中小企業が計算関係書類を作成するに当たって拠るべき指針の一つです。

一般的な会計基準よりも、内容が簡素化されており、創業者や中小企業の経営実態に配慮したものとなっています。

 

なお、これは適用予定でよいため、申込時点では実際に適用を受けている必要まではありません。

ただし、適用を受ける場合には、税理士等による確認が必要となります。

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